瀬名・信康誅殺の讒言を五徳が送る悲しい裏事情 8歳で政略結婚、世継ぎ産めなかった複雑な胸中

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ちなみに、この五徳姫の母親ははっきりしていません。信長の正室は斎藤道三の娘である濃姫ですが、ふたりのあいだに子はありませんでした。

嫡男の信忠は、信長がもっとも愛した生駒吉乃とのあいだに生まれており、五徳姫もこの吉乃が生母とされています。しかし妹のはずの五徳姫が、織田家の資料では姉とされており、判然としない部分があるのも事実です。

後年、彼女をサポートしたのが、信長の次男で腹違いの信雄であり、彼女の生母については不明な点が多いと言えます。ただ、8歳の少女が父母と離れて見知らぬ土地で過ごすというのは、なかなかにつらいことだったでしょう。

もっとも信長と家康の関係は良好で、ある程度の往来はあったのかもしれません。

五徳と信康、築山殿の関係

五徳が嫁いでから9年後、初めての子・登久姫を授かります。翌年には次女・熊姫をもうけました。ここで男子が生まれていれば、のちの展開も変わっていたでしょう。

ふたりとも女子で跡継ぎではなかったあたりから、五徳の立場は微妙になってきました。姑である築山殿が、跡継ぎが産まれぬことを心配して信康に側室をもつことを勧めます。

当時、五徳は18歳。まだ若く健康な彼女としては、この築山殿の判断は受け入れにくかったでしょう。しかも築山殿は、その側室に徳川と対立を深めていた武田家の元家臣の娘を推すのです。すでに徳川家の家臣になっているとはいえ、武田家と敵対している徳川家の嫡男の側室としては問題のある選択です。

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