セメント各社の値上げ計画が進まない事情

顧客のゼネコンが置かれた複雑な状況

少しずつ値上がりしてきたセメント価格も、今後の値上げ交渉はタフなものになりそうだ(写真:arch/PIXTA)

2014年夏、セメント各社は近畿圏を除き、1トン当たり約300円の値上げを2年ぶりに浸透させた。

だが、業界最大手の太平洋セメントは「4年前に掲げた1トン当たり1000円の値上げは道半ば」(広報)という。住友大阪セメントも「2013年度に1トン1000~1500円の値上げを打ち出したが、完全には浸透していない」(藤末亮・代表取締役専務執行役員)として、2015年度以降も値上げ姿勢を崩さない。

国内のセメント価格は、供給過剰によるシェア争いが続き、1980年度から長らく下落傾向が続いてきた。その後、各社が業績悪化に耐えられなくなった頃、ようやく値上げ機運が高まり、2002年度に価格は下げ止まった。

そして2008年度に状況が一変する。中国の「爆食」で“石炭ショック”が発生、主燃料である石炭の価格が7割超も高騰したのだ。住友大阪セメントを筆頭に、出荷停止も辞さない構えで主な需要先である生コンクリート業者と交渉。各社の足並みもそろい、1トン当たり1000円程度の大幅値上げを獲得した。

国内需要が回復

東日本大震災もセメント業界には思わぬ追い風となった。復興需要が牽引して、2011年度から需給が好転したのだ。以降、国内需要は3年連続で前年を上回り、東京オリンピック前年までは腰折れしないと予想される。活況を背景に、積み残してきた価格転嫁もじりじりと進展した。

さらに、原発停止に伴う火力発電のフル稼働で、セメントの主原料・石灰石とほぼ同成分の石炭灰が大量に発生、安価な原料を調達できた。また、震災で発生した廃棄物も引き受け、原燃料として使用。その代金として受け取った処理費用も利益を押し上げた。

だが、今後に関しては、セメント各社の思惑どおりに事が運ぶとは限らない。

次ページ顧客側の事情とは?
ビジネスの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • ソロモンの指輪〜「本能と進化」から考える〜
  • ソロモンの時代―結婚しない人々の実像―
  • ボクらは「貧困強制社会」を生きている
  • 御社のオタクを紹介してください
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
GAFA全解剖<br>あらゆる産業をのみ込む4巨人

グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの頭文字をとったGAFA(ガーファ)。もはやこの4社の名前を聞かない日はない。あらゆる産業や社会生活に影響を及ぼすデータ独占4巨人。その実力と戦略を解明する。