職人軽視の日本人が、建設業をダメにする 夢や誇りを持てなければ若者は集まらない

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スウェーデンから日本人大工を指導するために来日した3人

職人(技能労働者)不足が常態化している建設業界。これを解消するために賃上げや社会保険への加入など、職人の処遇改善は大きなテーマだが、最大の難関となるのが月給制の実現だ。

ゼネコン(総合建設会社)正社員の給与はもちろん月給制だが、いまだに技能労働者は日当ベース。職人不足で労務単価が上昇し、ようやく賃金も増え始めたが、再び職人が余って仕事の奪い合いになれば賃金下落は避けられない。

「いまこそ処遇改善の最大のチャンス」。建設業界関係者は意気込むが、いかに安定した給与が得られる労働環境を実現するか。労働生産性の高い合理的な建設生産システムの構築にかかっている。

欧州と日本で異なる職人の扱い

2014年暮れ。スウェーデンから3人の大工が来日した。輸入住宅メーカーのスウェーデンハウス(社長・岡田正人氏)が、日本人大工への技術指導を行なうために、正社員契約を結び呼び寄せたのだ。2020年をめどに実施が検討されている建築省エネルギー基準の義務化に向け、省エネ住宅の本場である北欧の大工から指導を受けて施工品質の向上を図るのが目的だ。

「木造建築の技能者が技術指導を目的に入国するのは初めてだったらしく、入国審査に1カ月も時間がかかった」

日本では、技能者のものづくり技術を「職人技」と言って称賛はするものの、ドイツのマイスター制度のように待遇や報酬にきちんと反映する仕組みがない。建設分野で現場施工者の技能の重要性が正しく評価されていないことが、入国審査にも表れたのだろう。

今回、来日したアンダッシュ・オスミール氏(49歳)などによると、スウェーデンにもドイツのマイスター制度と同様に大工の公的資格制度があり、住宅の建設現場には資格者が常駐することが義務付けられている。日本にも、厚生労働省が実施する技能検定制度という建設分野の技能士制度はあるが、設計を行なう建築士とは違って技能士の資格がなくても住宅を建てることはできるし、資格をチェックされることもない。

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