プロ野球「応援主体のマーケ」から転換する深い訳 ライトなファンを増やす「ボールパーク化」

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今のNPBの応援団は自然発生的にできたものではない。「私設応援団」は、昭和中期から存在したが、球団にとっては痛しかゆしの存在だった。

客席の一角に陣取って、鉦や太鼓で応援して球場を盛り上げてくれるのはありがたいが、応援団幹部の中には親族の結婚式に選手の出席を要請したり、サインを強要するなど、目に余る行為もあった。チケット転売をめぐる便宜供与の話もあったし、暴力団や反社会勢力とのつながりも指摘されていた。

名古屋、バンテリンドームにある「暴力団排除宣言」(写真:筆者撮影)

2006年の暴力団対策法の施行以降、NPBは、球場から暴力団、反社勢力を排除するため警察と連携を図って応援団を登録制とした。申請者には団体名、代表者氏名、連絡先、構成員の人数、氏名、住所、連絡先を記入し、顔写真を添付することが求められる。今の応援団は、球団から支給されたIDカードを示して球場に入っている。球団の管理下にあると言ってよいのだ。

球場全体が応援歌を歌うスタイルができた経緯

同時に、NPB球団は「応援」を「コンテンツ」の1つとして活用することにした。

ある球団の元事業部長は、

「プロスポーツのプロモーションのためのコンテンツには、2種類ある。1つは、そのスポーツが好きでもない人に、スタジアムに来てもらうためのコンテンツ。ミュージシャンを呼んでミニコンサートをしたり、物産展をやって地方の特産店を味見させるなど、競技と関係ないイベントでもよい。

2つ目はそうして“たまたま”やってきたお客を『リピーター』にするコンテンツ。『また来たい』と思ってもらえるイベントだ。『応援』は、まさにリピーターを作るためのコンテンツだ」

と語った。

私設応援団がリードする応援に、一般の観客が呼応する。球団は関連する「応援グッズ」を販売するとともに選手ごとの応援歌の歌詞を配布したり、応援団と連携する形で「応援」をリピーター醸成のコンテンツとして強化していった。

その結果として、現在の「球場全体が応援歌を歌い、身体を動かす」ような観戦スタイルができたと言えよう。

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