プロ野球「応援主体のマーケ」から転換する深い訳 ライトなファンを増やす「ボールパーク化」

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通常、外野のポール横に設けられる「応援団席」は、この球場では3階席にある。応援の声は頭上から振ってくる印象だが、威圧感はそれほどない。

エスコンフィールド内の飲食店(写真:筆者撮影)

筆者は今年、4回球場に足を運んだが、デーゲームでは居酒屋の店員が「午後8時までやってまーす」と声を張り上げていた。球団が販売するチケットの中には「飲食付き」のものもあるのだ。

従来の「観客動員」の概念では収まらない営業スタイル

入り口で渡されたグルメガイドには34もの飲食店があった。球団グッズを販売する「ファイターズフラッグシップストア」もお客で賑わっていた。

この球場では、野球の試合はもとより、名物となったチアガールによる「きつねダンス」も、両軍の大応援団も「お酒や食事を楽しむための演出」と考えることもできる。「野球はあまり知らないけど、こんな球場なら行ってみたい」という声が、ネット上でも数多くみられる。

野球の試合がない日も、一部の施設は営業している。TOWER11ゲートという入り口から入って、飲食を楽しんだり、スタジアムツアーに参加することもできる。

エスコンフィールド最寄りの北広島駅(写真:筆者撮影)

この球場は、アクセスがあまり良くない(最寄りの北広島駅から徒歩約25分)ために、観客数が伸び悩んでいると報じられているが、試合のない日も数千人が来場しているのだ。従来の「観客動員」の概念では収まらない営業スタイルだと言えよう。

MLBの試合を見ていると、3万人、4万人とお客が入っているのに、観客席に空席が目立つことがよくある。これは球団がさばを読んでいるのではなく、お客が試合中も席を立ってスタジアム内をあちこち散策しているからだ。エスコンフィールド北海道も同様だ。

球場を本格的に「ボールパーク化」するには、大規模な設備投資が必要だ。どの球団でもできることではないだろう。しかしライトな顧客の獲得が、今後の球団ビジネスの核になるのは間違いないところだ。

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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