プロ野球「応援主体のマーケ」から転換する深い訳 ライトなファンを増やす「ボールパーク化」

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NPB球団も「ボールパーク化」をはっきり意識している。このコラムで2021年に西武ライオンズの本拠地メットライフドーム(現ベルーナドーム)の改装について紹介した。

飲食施設や子供の遊び場、グッズショップなどを充実させた改装は、まさに「ボールパーク化」を意識したものだと言える。 

ただし、そうなったからと言って「応援団」を軽視しているわけではない。ライトな観客にとって、大音量の応援は、非日常空間を感じさせる「演出」になる。ボールパーク化と「応援団」は共存が可能だと言えよう。

エスコンフィールド北海道の仕掛け

今季開場したエスコンフィールド北海道は、そうしたトレンドをさらに一歩進めた「ボールパーク」だと言える。

球場周辺には、子供用の野球場、池をめぐる庭園、ログハウス風の宿泊施設、ドッグランなどが立ち並ぶ。人気のパン屋には行列ができている。これらの施設は野球の試合がなくても利用することができる。

エスコンフィールドHOKKAIDO エントランス(写真:筆者撮影)

球場内には、これまでの球場の本拠地にはない本格的な飲食街がある。2階の「七つ星横丁」と名付けられたゾーンでは、職人が目の前で握る本格的な寿司店や広島風お好み焼きの店などが並ぶ。

また外野エリアには地元のクラフトビール「よなよなエール」の醸造タンクから直接飲ませるブルワリーレストランもある。

象徴的なのは、そうした店の椅子の一部が「球場に背を向けている」ことだ。「野球を見なくても楽しめる」空間になっている。

エスコンフィールド北海道の定員は3万5000人だが、客席は2万9000席。残りのお客は指定されたエリアで自由に飲食を楽しみ、思い思いに野球を見ることになる。立ち見もOKで、そのためのカウンターもある。これは西武のベルーナドームにもあるが、はるかに規模が大きい。従来の球場では「自分のお席で観戦してください」と係員が声を上げていたが、この球場ではそれはない。

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