「ゴミをビジネスに変える」台湾の驚きの最新事情 廃棄物をテクノロジーで生まれ変わらせる人たち

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

もう一つ、吳氏の「循環型経済」への取り組みが、同氏が2017年に立ち上げた、台湾内外のクリエイターらとともにリサイクルガラスの新たな可能性を探る「W Glass Project」だ。

「春池ガラス」のお膝元である新竹市内の公園内に、ガラス吹き体験やギャラリー、セレクトショップ、カフェを併設した「春室Glass Studio + The POOL」を創設。台南市美術館内に「南美春室 The POOL」、無印良品の美麗華店店内に「北美春室 Glass Studio」をオープンするなど、全台湾でリサイクルガラスの価値を高める動きを続ける。また、台湾内外のアーティストやデザイナーらとリサイクルガラスでプロダクトを制作したり、大規模なイベントを開催するといった取り組みも続けている。

そうした取り組みが評価され、2016年には蔡英文総統らが「春池ガラス」を訪れ、蔡総統から「台湾における循環型経済の規範である」と讃えられ、2018年には吳庭安氏が総統イノベーション賞を受賞した。

2022年、台南市美術館内にオープンした「南美春室 The POOL」(提供:春池ガラス、右写真の提供:春室The POOL、撮影:Kris Kang)
2018年に総統イノベーション賞を受賞した吳庭安氏(提供:総統府、撮影:蔡世豪)

課題は後を絶たない。やるべきことはまだまだある

素人目には前途洋々に見えるが、吳氏の肩にのしかかる課題は後を絶たないようだ。

「台湾にほかにもガラスのリサイクルを手がける人たちが出てきてくれることを望んでいます。台湾中のガラスのリサイクルを当社だけで研究・開発するには膨大な時間がかかりますし、限界がある。異なる領域でガラスのリサイクルの可能性を探る仲間が必要です。近い未来に大量廃棄されることになる『太陽光パネル』のリサイクルも大きな課題ですし、やるべきことはまだまだあります」

筆者は数年来オードリ・タン氏を取材してきたが、「世界の各地域でそれぞれ真剣に問題に向き合う人々が、インターネットによってつながり、前進できるようになった」という考え方を彼女から受け取ってきた。

今回は日本と同じ東アジアで、独自の「ゴミ戦争」への戦略を展開する台湾のトップランナーたちの頭の中をお届けした。今後、日本と台湾が手を取り課題に向き合うことができたらと願ってやまない。

近藤 弥生子 ノンフィクションライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

こんどう やえこ / Yaeko Kondo

2011年より台湾・台北在住。オードリー・タンからカルチャー界隈まで、生活者目線で取材し続ける。東京の出版社で雑誌編集を経たのち、駐在員との結婚をきっかけに台湾移住。現地デジタルマーケティング企業で勤務後、独立して日本語・繁体字中国語でのコンテンツ制作を行う草月藤編集有限公司を設立。台湾での妊娠出産、離婚・シングルマザーを経て、台湾人と再婚。著書に『オードリー・タンの思考』『オードリー・タン 母の手記「成長戦争」』『まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう』『台湾はおばちゃんで回ってる⁈』がある。

ブログ:「心跳台灣」

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事