「ゴミをビジネスに変える」台湾の驚きの最新事情 廃棄物をテクノロジーで生まれ変わらせる人たち

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「それにしても、日本からの取材を受けるなんて面白いな。日本には世界がリプレイスできないくらい優秀な技術がたくさんあって、私たちもそれらを使わせてもらっているんですよ」と、黃氏は目をキラキラさせていた。

台湾のガラス回収率、世界ランクトップのなぜ

 台湾には、リサイクルに関してもう一人のトップランナーがいる。創業50年余、台湾のリサイクルガラスのおよそ50〜70%を回収するという、業界最大手の「春池ガラス」2代目の吳庭安氏だ。

リサイクルガラス業界最大手「春池ガラス」2代目の吳庭安氏。新竹市のガラス工場にて(筆者撮影)

台湾では、「何度でも100%再利用できる」という理由で、ガラスのリサイクルがオードリー・タン氏を含む政府や企業から広く支持されている。リサイクルガラスは、さまざまなプロダクトや店舗などの設計、政府主催のコンテストにおけるトロフィーなどにも積極的に採用されている。

台湾は国連およびその専門機関に参加できない事情から、世界ランキングに入れられることが少ないが、政府による自主統計によれば、ガラスの回収率は世界2位の92%を誇る(1位はスウェーデンの99%)。そして回収されたものはほぼ再利用されている。

ひるがえって日本はというと、70%を近年やっと達成したところだ。日本のガラスのリサイクル率が低いのには、ガラスが「重い、割れる、廉価である」といった理由があるようだが、台湾はそうした課題をいかにも台湾らしい方法で解決していた。

 「春池ガラス」の創業者・吳春池氏らが1980〜1990年代に政府と話し合って作った仕組みに秘密がある。「ガラスの生産者は生産量に合わせて政府にデポジットを支払い、それを回収した際には、量に合わせて政府から奨励金が得られる」というものだ。

日本でも一般消費者が酒屋にビール瓶を返却すると保証金が返却されるような酒屋有志による動きがあるが、台湾はそれを30年前から政府単位で行っていた。

吳氏は「世界トップクラスの回収率があるのは、過去に政府と民間共同で作った仕組みが時間を経て効果を出しているということ」と語ってくれた。

次ページさまざまな素材がある中で、リサイクルガラスの価値を高める
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