ごみを出せば、いつの間にか収集されて視界からなくなり、記憶からも消え去っていく。読者の皆さんの中にはそのような感覚の方が多いだろう。自分が出したごみがどのようになって何処に行くのか――しっかりと説明できる人はいるだろうか。
筆者の勤務校(板橋区)で、板橋区在住の職員の方と話しているときに、たまたまごみ収集の話題となったので、自分が出したごみが何処にいくのかを尋ねてみたことがある。その回答は、「板橋区が運営する清掃工場に持っていく」であった。
区が運営する清掃工場ではないのだが、それは一旦置いておき、清掃工場に搬入後はどうなるかと尋ねたところ、「ごみは燃えてなくなる」と答えられた。ごみは燃えてもなくならず焼却灰として残るので、それをどこに持っていくのかと尋ねたところ、「清掃工場内に埋め立てるのではないか」とのことだった。
この方に限らず同じような回答をする人が多いだろう。
清掃職員の人も知らないごみの行方
ごみの行方について知らないという人は一般の方だけではない。筆者は3月末まで、神奈川県座間市のクリーンセンターにて、収集現場の実地調査として週1回程度清掃車に乗務して作業を体験させてもらっていた。そこで懇意にしている清掃職員の方にもごみの行方について尋ねてみた。
驚いたのが、ごみを搬入する清掃工場までは当然ながらわかるのだが、その後の行方は認識されておらず、「清掃工場の敷地に埋め立てる」と回答。現役の清掃職員の方でさえもごみの行方を知らなかったぐらいなので、一般の方がわからなくてもおかしくはない。
ごみの行方がわからない理由の1つに、清掃事業が縦割りになり「一貫性、統一性・一体性」が確保されていない、という問題があると筆者は見ている。これらによって生じる問題は多岐にわたるが、ここでは東京23区を事例に、皆さんの生活とも直接関わる「焼却炉の緊急停止による億単位の損失」と「じわりと近づく埋立地の残余年数」の2つに絞って見てみよう。
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