しかし、分業により行われていると、自らの受け持つ範囲の適正化が最優先されるため、また、地方自治体間に組織間の壁も生じるようになり、連絡・調整や連携が十分になされず、清掃事業の一貫性、統一性・一体性が意識されにくくなる。
結果、ほかの工程で問題が生じていても、わが事として受け止められなくなっていく。冒頭で述べたごみの行方への関心を喚起しない住民や清掃職員がいるのも、この点が原因になっているだろう。
分業によって起きている2つの問題
ではここで、具体的に起きている問題について紹介する。
1つ目は、「焼却炉の緊急停止による億単位の損失」だ。
近年、清掃工場に不適正廃棄物が搬入され、焼却炉の緊急停止を余儀なくされるケースが多発している。これらの停止の原因は、清掃職員が清掃工場の受け入れ基準に合わないごみを収集して搬入する場合や、住民がごみを十分に分別せずに排出している場合に起きる。
例えば、水銀を使用している製品(水銀体温計、水銀血圧計)が可燃ごみとして清掃工場に搬入・検知され、焼却炉が操業停止となったことがある。
この水銀混入ごみによる焼却炉の停止に関わる復旧には多大な時間と費用がかかる。清掃一組のホームページでその状況が公開されており、額が大きいもので、2010年の足立清掃工場では約3カ月で約3億円、2014年の中央清掃工場(中央区晴海)では約4カ月で2億円もの費用がかかっている。
それだけでなく、操業停止となった清掃工場にごみを搬入している区側では、ほかの清掃工場への遠距離搬入が強いられ、定時収集を行うため追加で清掃車両を手配するコストが生じた。このように、清掃工場が計画外停止するたびに、高額のコストがかかり住民の税金がやむをえず使われるようになってしまう。
この状況に対し、①収集・運搬と②中間処理が同じ地方自治体により運営されていれば、清掃工場での緊急停止を防止するようなごみの分別排出を住民に促しながら、清掃職員は注意深くごみを収集していくような取り組みが積極的に推進されていったと筆者は考えている。
また、不十分な分別に起因する清掃工場の緊急停止でどれぐらいの損失になるのか、広報紙などを通じて直接的に住民に伝えられるようになるであろう。
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