「ゴミをビジネスに変える」台湾の驚きの最新事情 廃棄物をテクノロジーで生まれ変わらせる人たち

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そしてもうひとつ、吳氏が講演などでよく強調するのが「さまざまな素材がある中で、リサイクルガラスの価値を高める」ことが「循環型経済」のカギとなるという点だ。

回収前よりも価値を高めることが重要

「循環型経済を“ゴミの分別回収”のことだと勘違いしている消費者が多いのですが、それは単なるステップの一つに過ぎません。“循環型経済”において最も重要なのは、ゴミが回収された後、リサイクルによって回収前よりも価値を高めることです」

吳庭安氏は、1984年にガラス工場が盛んな台湾の新竹市で生まれ、台湾の国立成功大学でリソースエンジニアリングを学んだ後、イギリス・ケンブリッジ大学で工業経営学を専攻している。台湾に戻った後は、半導体が世界トップの台湾企業TSMCで経営戦略に携わり、2012年に家業である「春池ガラス」を継いだ。

 吳氏が家業を継いで真っ先に行ったのが、リサイクルガラスによる建材「“AH” Lightweight Insulation Block」の開発だった。液晶ディスプレイ(LCD)用ガラスの特性である耐熱性、防音性、耐水性を活かす商材として、およそ5年をかけて開発したというブロックとそのもととなる素材という二つの建材が、国内外で好調に売れている。以前と比べて500%の量のガラスをリサイクルできるようになったというから、大きな成功といっていい。

さらに、リサイクル工場へのDX導入も進めた。ガラスのリサイクル作業の「分別」という工程に、AIを導入したのだ。カメラのような機械で色や材質、サイズなどを見分け、エアーコンプレッサーで分別する。

もちろん全ての分別作業がAIによって行われるようになったわけではないが、1時間に人間が分別できる量が1トンほどであるのに対し、AIは同じ1時間の間に、1ラインで10〜20トンほどを処理できるという。

吳氏は、経歴だけ聞くとエリート中のエリートだが、温厚な人柄で、物腰も柔らかい。

「専門知識を難しく話すことは簡単ですが、それだと皆の理解は得られません。だから複雑に話すのはあまり好きではないんです」とはにかむ。

そんな吳氏だからだろう。政府機関や無印良品など、SDGsを目標に掲げる企業やブランドらと次々にコラボレーションを実現している。 

市民らの憩いの場であり、カルチャースポットとしても人気の「春室Glass Studio + The POOL」(筆者撮影)
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