高良健吾「下手なのに評価される」葛藤を経た現在 「俳優を続ける原動力は、悔しさが一番デカい」

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── 達成感や喜びを感じることは?

高良:小さな達成感はめちゃくちゃあります。それは作らないといけないと思うし、小さな喜びを1個1個積み重ねています。ただ、大きな達成感を感じることは、まだ避けているのかもしれない。あえて感じないように、自分を制してるというか。

── そんなふうに、ご自分に厳しいのも昔からですか?

高良:厳しいというか、それが好きなんだと思います。普段は自分を甘やかしてる部分もたくさんあるし、極端ですね。

── 甘やかすというのは、例えば?

高良: (体づくりのために)小麦は控えるぞ、と思ってもやめられないし、甘いお菓子も食べちゃうし(とテーブルに用意されたチョコレート菓子をパクリ)。今は撮影もお休み中で、先日は10日間旅行もしました。一人旅で、ラオスに行きました。

休む時間は必ず作るし、旅は自分に必要な時間だとわかっているので、コロナ禍前は年に1、2回は海外に出かけていました。

── 旅に出かけると、心身がリセットされるのでしょうか。

高良:それもあると思います。でも、リセットしにいくぞ! という気持ちではないんです。海外に行くと思い通りにいかないことだらけなので、流れに身を任せるのが単純に面白いんですね。

日本にいる時は、仕事をしていたり、人前に出る際に、失敗のないように自分をコントロールしようという意識が強く働きますが、海外に行くと、自分をコントロールしようなんて思わないし、その必要もない。それが毎日続くとかなりリラックスできて、なんかこう、マッサージされてる気分(ニッコリ)。

当たり前のことを当たり前に、難しくなく見せたい

── 映画の茂道も、温かな人柄で、皆の凝り固まった心をほぐしてくれますが、前田監督の演出はいかがでしたか?

高良:僕の芝居に対して監督が細かく指示してくれた瞬間は、「もう少し声を高く」とか、「そこ、もう少し間を詰めて」というふうに、タイミングや言い方に関することがほとんどでした。それは、気持ちの部分への指摘じゃなくて、物語をテンポ良く運ぶための作用的な助言で、つまり監督はリズム感を見ている。

役の気持ちを説明されても、自分では絶対にたどり着けないところに、そういう直接的な言葉で導いてくれたのは、本当に助かったし、うれしかったです。

(写真/内田裕介(Ucci))

── 仕上がった映画をご覧になっての感想は?

高良:なるほど、と思いましたね。この原作漫画と台本を、前田さんはこういう映画に料理するんだなって。家族の物語でもあるけれど、ミニマムな話にはしていなくて、スケールもデカい。僕も今年(撮影は昨年)初めて監督を経験(※)して、そういう目でも見たせいか、余計すごいなと思いました。

※高良さんは、予算・撮影日数など同条件で5人の俳優たちが25分以内のショートフィルムを制作するプロジェクト『アクターズ・ショート・フィルム3』に参加。東京を自転車で走り回るメッセンジャーを主人公にした作品「CRANK-クランク-」で脚本・監督を担当。

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