高良健吾「下手なのに評価される」葛藤を経た現在 「俳優を続ける原動力は、悔しさが一番デカい」

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── 役を演じる際は、役柄との距離はどのようにとっていますか?  一歩下がって客観的に見ているのか、共感が入り口になるのか。

高良:僕は、共感がなくても理解があればできると思っていますし、共感ができないからオファーを断るということはないです。役に対して常に共感を求めていたら、演じる役は本当に狭くなると思うし、自分にオファーが来るような生きにくい役に共感ばかりしてたらヤバいと思う。

── 役の気持ちが理解しがたい時はどうするんですか?

高良:理解しがたいということはないです。それは、自分がやるということで覚悟を決めて、誰よりも役に寄り添おうと思うので、例えば犯罪者であっても理解はできるんです。ただ、共感むずいな……というのはあります。でも、それをやる仕事なんだと思っていますね。

── もう辞めたいとか、休みたいと思ったことは?

高良:いつになっても“他人を演じる”ということがわからなくて、「もう辞めたい」と常に思っていました。ある役が成功しても、次から全部うまくいくのか? というとそうじゃない。それはどの世界も一緒かもしれないけれど、その不安や焦りが常につきまとっていました。

それでも向き合えるようになったのは、役者のピークの訪れというものが、例えばスポーツ選手のそれに対してずっと緩やかだと気づいたからです。スポーツ選手の闘いも、たぶんひとつの表現で、彼らは身体的なピークが早くやってくるぶん、悩んで止まっている暇はあまりないだろうし、進むスピードも半端なく過酷だと思うんです。

けれど役者の仕事は、もしも長生きしてやれるなら、80代、90代まで続けられる。むしろ役者の芝居や表現のピークは、20代、30代でくるよりも、50代や60代できた方が僕は面白いと思う。そんなふうに、「ピークはもっと後にある」と思えたことで、焦り方も変わりました。

俳優を続ける原動力は「悔しさ」

── そういうふうに気持ちをシフトチェンジできたきっかけが何かあったのですか?

高良:誰がというわけじゃなく、ベテランの先輩たちの芝居を見ていて、「あの人の芝居に、自分が数年やそこらで追いつける気がしない」と感じたからですね。なぜなら、先輩の芝居には生きざまが出ているので。

今自分が、この場面でこういう芝居をやりたいと願っても、人生の経験値が足りなくてカバーできない。でも、生きざまが出るまでには時間がかかるから、もっと長いスパンで考えてもいいんじゃないかと思えるようになってきたんです。

── 生き様が出るのはこれからだという希望も、俳優を続ける力になっていますか?

高良:俳優を続ける原動力は、悔しさが一番デカいです。もうちょっとできるようになりたいという思いが一番ですね。

(写真/内田裕介(Ucci))
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