コスモVS旧村上ファンド、株主総会前に過激応酬 異例の買収防衛策は「票が割れる可能性」も

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1年以上にわたる対立が正念場を迎えている。左は村上世彰氏(撮影:梅谷秀司)、右はコスモ石油のサービスステーション(写真:編集部)

石油元売り大手のコスモエネルギーホールディングス(以下、コスモ)と、アクティビスト(物言う株主)の村上世彰氏との対立が激化している。旧村上ファンド系の投資会社「シティインデックスイレブンス(以下、シティ)」は現在、約20%のコスモ株を保有している。

6月22日開催予定の株主総会が、1年以上にわたる対立の節目となりそうだ。

コスモは、シティ側が4月に提案してきた社外取締役選任の株主提案に反対の意向を表明し、所定の手続きなしに最大約40%のコスモ株を買い増す恐れなどがある「有事」とし、シティらを除いて新株予約権を無償で割り当てる買収防衛策発動の是非を株主総会で諮る。しかも、コスモはシティを除く異例の形で採決を実施する方針だ。

これに対しシティは5月29日、こうした採決は「経営陣の保身」としてコスモの買収防衛策発動や山田茂社長の取締役選任議案への反対を一般株主に呼びかけるなど、熾烈な対立に発展している。

製油所の統廃合や再エネ子会社の分離を要求

「ココロも満タンに」のCMで知られるコスモ石油を子会社に持つコスモ。だが、2010年代後半に進んだ石油元売りの業界再編から取り残され、販売シェアでENEOSホールディングス、出光興産に大きく離される業界3番手に甘んじている。

今後、石油需要の一段の縮小が避けられない中、同社は風力発電事業を成長の核と位置づけ、陸上風力の事業拡大と洋上風力への進出を掲げている。

そこに目をつけたのが、元経済産業省の官僚で石油業界にも造詣が深い、村上世彰氏だ。「コスモエコパワーには競争力・成長性があり、一層の飛躍のためには他人資本の活用・上場が有効である」(シティ)とし、再エネ子会社の分離・上場や製油所の統廃合、株主還元の充実などの議論を進めるようコスモに要求している。

これに対して、コスモの山田茂社長は「われわれの成長戦略の大事な肝を切り離してしまっては、グループ全体の成長はありえない」と真っ向から反論。「このままでは彼らが経営の支配権をとって会社の価値、株主価値を毀損することになる」と断じる。

村上氏が関わるシティがコスモ株への投資を始めたきっかけは、2021年8月にコスモの筆頭株主だったアラブ首長国連邦のアブダビ政府系ファンドがコスモ株の一部売却を始めたことだった。

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