コスモVS旧村上ファンド、株主総会前に過激応酬 異例の買収防衛策は「票が割れる可能性」も

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山田社長は、「再エネ事業は、これからきちんと収益を確立していく成長期にある。一定の収益基盤が確立した後、それでも企業価値が認めてもらえないのであれば、誰かと手を組むことや上場も含めて考えていかなければいけないかもしれない。しかし、いま成長戦略の大事な肝を切り離してしまっては、グループ全体の成長はありえない」と言う。

今後の大規模プロジェクトに向けた人材や資金確保の面でも、分離独立は適当ではないというのがコスモの主張だ。

今後の焦点は、株主総会でのプロキシーファイトなどを含め事態がどこまで発展するかだ。

コスモ側は6月6日付の株主総会招集通知でも改めてシティ側の提案に反対・反論した。買収防衛策発動の是非については、シティなどの議決権を含む採決では「株主の意思の発現とは評価できない」として、シティらを除く採決方式の正当性を主張している。

一方、シティ側は5月29日、こうした採決方式は「横暴な強行採決」とする声明を発表し、約22%の議決権を持つ持ち合い株主も除外すべきだと主張する。この採決方式を前提に、仮に持ち合い株主が会社側議案に賛成すると、可決ラインは2割の株主の賛成で足りるという。

企業統治に詳しいIBコンサルティングの鈴木賢一郎社長は、「(コスモ側の)買収防衛策発動議案は否決される可能性も十分ある」と話す。

買収防衛策の発動議案は票が割れる?

「今が『有事』と言えるのかがポイントだ。実際に村上氏側が(20%を超える)買い増しをする際に、具体的な条件を見て防衛策発動の採否を判断したいという株主も多いと思う。票は割れるだろう」(鈴木氏)

異例の採決方式について鈴木氏は、「約1年間、対話もしてきた株主が戦略を提示してきて、『それは企業価値を毀損するから駄目だ。だからあなたたちを決議から除く』となれば、今の経営陣の方針と異なることを言う株主はみんな決議に参加できないことにならないか」と疑問を呈する。

防衛策が可決された場合でも、「株の買い増しがなければ防衛策は発動されない。そのため、コスモには(シティ側に)20%の株を持たれたまま、経営改善などの株主提案や臨時株主総会の開催を求められるリスクが残る。結局、コスモはシティなどの保有株を自己株TOB(株式公開買い付け)で買い取るのではないか」(鈴木氏)。

2022年6月には、任天堂創業家から株を買い進められた東洋建設の「買収防衛策」が議決権行使助言会社から反対推奨を出され、株主総会前日に議案が取り下げられた事例もある。

6月22日に都内のホテルで開かれる株主総会で、「一般株主」はどう判断するだろうか。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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