一方、村上氏らに対して、コスモの山田社長は警戒感をあらわにする。「これまでの彼らの主張を並べてみると、ほぼ株主還元に終始しているように見える。経営には関与するつもりはないと彼らは言うが、一定程度の株式を取得しており、ものすごい影響力を持つ」。
対決姿勢を強める両者だが、どちらの主張に理があるのか。
シティがコスモに求めている論点は大きく3つに集約される。①製油所の統廃合を含む抜本的取り組み、②再エネ事業子会社(コスモエコパワー)の分離独立の議論、③株主還元の見直しだ。
このうち、①製油所の統廃合について、コスモは「10年は閉鎖の必要はない」と言う。2013年に香川県の坂出製油所を閉鎖し、その後、四日市製油所(三重県)の一部ラインを停止させている。こうした供給削減と販売数量の拡大により、生産量が販売量を下回る「ショートポジション戦略」で収益を高めてきた。コスモは残る3つの製油所を一体運営することで「高付加価値のガソリンや軽油などを生産できる」などとする。
山田社長は、「(シティ側は)製油所を閉める検討を行い、地元や同業他社とも話し合いをしろと言うが、地元にいたずらに不安を与え、レピュテーションも毀損しかねない。まして他社との話をするのは独禁法上大きな問題だ。こうした提案を平気でしてくること自体、われわれの考えとまったく相容れない」と語る。
見劣りしていたコスモの株主還元
③の株主還元については、コスモ側が見直しの動きを見せている。絢氏が「過去10年ほど、総還元性向10%程度の状態が放置されてきた」と指摘するように、コスモの株主還元策が他社に比べ見劣りしてきたことは否めない。業界再編後、ENEOSホールディングスと出光興産は50%以上の総還元性向を掲げている。
この点について山田社長は、「2011年の東日本大震災で製油所が被災し、2015年の原油価格下落で在庫評価損も広がった。財務体質が非常に脆弱で、しばらく株主還元より資本拡充を優先させた。株主還元が小さかったのは事実だ」とする。今年3月に策定した中期経営計画では「総還元性向60%以上」を打ち出している。
焦点になりそうなのは、②の再エネ事業の分離・上場だ。
再エネ子会社のコスモエコパワーは、現在、全国で30万キロワットの風力発電を展開(国内シェア3位)。これを2030年に陸上風力と洋上風力を合わせた設備容量150万キロワット超にする計画で、再エネ分野で業界をリードしている。
シティ側は投資家の視点から次のように主張する。「再エネの事業価値と、(縮小していく)石油事業などを含むコスモの企業価値があまりにも違う。コスモのPER(株価収益率)は3~6倍程度。一方、再エネ事業は一般的にPER25倍以上で評価されている。こうした状態で、再エネ事業をコスモの中に入れておくべきなのか。そうした議論が取締役会であってしかるべきだ」(絢氏)。
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