──コスモとの対話がなぜ対立へと変わったのでしょうか。
福島 2022年の11月25日だったと思うが、そこからボタンの掛け違いが始まった。その場で村上世彰が言いたかったのは、「10年後、20年後のコスモのあるべき姿、石油業界のあるべき姿をきっちり議論できる社外取締役を入れるべきだ」ということだった。そのために村上の人脈から「これという人を何人か推薦してもいい」という話をいちばん伝えたかった。
当時コスモ社長だった桐山浩・現会長が時間がないとのことで、その日の議論の場は朝食会。食事をしながらサッカーのワールドカップからコスモの企業価値までと話題が飛び交った。その中で強く言ったり、弱く言ったり、笑いながら言ったりしたことが、誤解を生むもとになったと思う。
──コスモの公表資料にある「やるのなら血みどろになっちゃいます。短期的な買収防衛策をやられたら僕はもちろん全員の首を切りにいきます」という世彰氏の発言。穏やかではない内容です。
村上 それは「会社側の出す取締役候補の選任議案に賛成できないかもしれないよ」ということを言っている。父は感情が高ぶるときがあるが、これら切り取られた発言には前後の文脈がある。
とはいえ、父は反省していた。「僕はもう議論の場に出ないほうがいいのかな」と。がんばって伝えたい、伝えたいという気持ちが先走っているだけなのだが。
「MOM決議」は経営陣の自己保身
──6月22日のコスモの定時株主総会に向けて、山田茂社長の取締役再任に反対するよう、ほかの株主に呼びかけています。そこまでする理由は。
村上 いちばんの理由は、経営陣の保身のための不当な買収防衛策の発動について、「MOM決議」(買収者および経営陣を除いた株主の意思を確認すること)という不適切な方法で承認を得ようとしていることにある。
MOM決議が許容されうるのは「事案の特殊事情も踏まえて、非常に例外的かつ限定的な場合に限られる」。経済産業省が立ち上げた「公正な買収の在り方に関する研究会」の指針原案にはそう書かれている。そして特殊事情として示されているのは、「買収手法の強圧性、適法性、株主意思確認の時間的余裕」などだ。
私たちは、2022年4月の株式取得以降、コスモに何度も説明をしてきた。しかも買収防衛策をコスモが今年1月に導入して以降、1株も株式を取得しておらず、約半年間、株式を購入していない。株式をさらに追加取得するかどうかも現時点では決めていない。
つまり、強圧性や株主意思確認の時間的制約は存在しない。そのような中で、MOM決議を強行することはあってはならない。