事業会社や銀行などとの「持ち合い株」を除かずに、MOM決議をしようとしていることにも問題がある。
コスモにおける広義の持ち合い比率は議決権で約22%。MOM決議で、これらの広義の持ち合い株主は、経営陣に有利な議決権行使をする可能性が高い。公正な決議とはならず、経営陣の自己保身に使われることは明らかだ。
再エネ事業とコスモ自体の評価に差
──社外取締役1人の選任を株主提案しました。再生可能エネルギー事業のコスモエコパワーのスピンオフ(分離)上場について、真摯な議論を促すためというのが理由です。その真意は?
村上 再エネ事業とコスモ自体のバリュエーション(価値)にはあまりにも開きがある。そこが大きなポイント。
PER(株価収益率)でいうと、成長性が見込まれる再エネ企業は、一般的に25倍以上の評価がつけられている。一方、コスモのPERは3~6倍で推移している。コスモが現在の市場評価から抜け出せないのであれば、再エネ事業にいくら投資して利益を出しても、株価向上にはつながらない。
そういう状況で、再エネ事業を100%子会社としてコスモの中にとどめておくべきなのか、それとも分離して株式上場させるのか。また最終的にコスモはPBR(株価純資産倍率)1倍以上を目指せるのか。そうした議論が取締役会であってしかるべき。
ところが取締役会での議論が株主からすると見えない。そこで私たちが候補とする社外取締役1名を入れて議論してもらい、結果として何がいちばんいいのか、株主に開示してもらう。こうしたプロセスを経てほしいと思うので、株主提案を行っている。
──コスモは「再エネ事業をバリューチェーン全体で成長させていくことこそが企業価値最大化につながる」とし、スピンオフに否定的です。
福島 カーボンニュートラルへと向かう時代の中で石油事業とは違う事業へ生まれ変わるための最大のフックが再エネというのは、山田社長の言うとおり。それはよく理解している。
しかし、経営者の視点ではなく、もう一歩上の株主の目線で考えると、スピンオフさせてPER25倍で評価されたほうがはるかにいい。外部資本などの力を借りて再エネの事業規模を拡大していけば、トータルでの企業価値は向上する。
理論的にはスピンオフで再エネ事業が20%の持ち分会社になっても、利益規模が5倍になればコスモが取り込める利益は今と同じ。大きな視野に立つと、山田さんの言っていることがすべてではない。こういうことをひざをつき合わせて議論したいとの要望を出したが、書面のやりとりでと言われた。それで議論が深まらずに終わった。