コスモ社長に「失格の烙印」押した村上氏の真意 株主提案の村上絢氏らを直撃インタビュー

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──成長期待のある再エネ事業をスピンオフ上場させたら、コスモに対する市場評価はむしろ下がりませんか。

福島 石油事業については現在、過剰なディスカウントが働いていると考えている。原因は今後生じるであろう製油所統廃合コストを市場が不安視しているから。製油所統廃合のシナリオやコストを株主にも理解や試算ができるよう開示することで、不安感は払拭される。

村上 製油所を統合して縮小均衡になっていく中で最適な資本の額も変わる。これまでのように自己資本を過剰に積み増す必要がなくなる。そうなればROE(自己資本利益率)は上がっていく。

福島 厳しい言い方をすれば、再エネを切り離した後の会社は非上場会社になるか、よそと統合されるとか。遠くない将来に日本の石油精製業は大幅な縮小を迫られることを考えると、どうあがいても今のままではいられない状況だと思う。

短期的利益のみを求めていない

──業界再編を促すことも狙っているのですか。

村上
 業界再編が必要との考えは変わっていない。だが私たちが「こうすべきだ」と声高らかに言うだけでは、業界再編は実現しない。それよりもコスモに投資したのは、アブダビ政府系ファンドが保有していたコスモ株約20%を市場で売り出したことが大きかった(2021~22年3月で売却)。

コスモHDの山田社長
以前は常務として村上氏らと対話してきたコスモHDの山田茂社長。6月22日の定時株主総会を前に村上氏らから取締役としては不適任と断じられた(撮影:梅谷秀司)

ファンドが株を市場で売り出すかもしれないとのニュースが最初に流れたとき、まだ1株も持っていなかったが、名前を名乗らずにコスモのIR担当に電話した。

「市場で売り出されたら株価が暴落するので、自分たちで買ったほうがいい」と訴えた。しかし、コスモの経営陣はそういうことをせず、株価は暴落した。

今もそうだがコスモは業績がよく、自己資本もどんどん増えていた。売り出しをさせて株価を暴落させる必要はなかった。この経営者たちは資本政策のことを何も考えていないと感じた。そこで、株主価値を上げることを経営陣に考えてもらうべきだと思って投資を始めた。

──​短期的利益より中長期的な成長を図る経営をしていくと、山田社長は話しています。「時間軸」が違うのだと。

福島 論点が大きくずれている。コスモのように利益をしっかり出しているような会社は、短期も中期も長期もちゃんと株価を意識した経営をしなければいけない。われわれは短期的利益だけを求めているとよく責められるが、求めているのは短期・中期・長期の「全部」。

短期でも中長期でもPBR1倍を超えるようなバリュエーションにしていかないと、山田社長は経営者として失格なんです。その辺の意識も食い違っている。

村上 私たちの提案をまだ理解していない。再エネ事業を100%子会社のままでやることだけが方法ではないはず。いろんな方法を模索して、いちばん価値の上がる方法で中長期的に価値を上げてほしいと訴えている。時間軸の問題ではない。

緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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