「安すぎた」ファミマTOB、伊藤忠との攻防の全内幕 地裁決定文が指摘「機能しなかった特別委員会」

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東京地裁の決定文からは、ファミリーマートの特別委員会が、大株主の伊藤忠商事から受けてきたプレッシャーの実態も浮かび上がる(写真:編集部撮影)

TOB(株式公開買い付け)の歴史に残る、画期的な判断が下された。

3月23日、東京地方裁判所は2020年に伊藤忠商事がファミリーマートを100%子会社化する際に実施したTOBについて、実際の買い付け価格である1株当たり2300円よりも300円高い2600円が妥当とする判断を示した。

東京地裁に買取価格決定の申し立てをしていたのは、アメリカ系ファンドのRMBキャピタル、香港系ファンドのオアシス・マネジメント、それに個人1名だ。これらの元ファミリーマート株主は2020年のTOBに応募せず、同額で強制買い取り(スクイーズアウト)された後、TOB価格が「安すぎる」として公正価格の決定を求めていた。東京地裁の決定ではRMBをはじめとした少数株主側に軍配が上がった格好だ。

東洋経済が入手した100ページに及ぶ東京地裁の決定文には、至る所にマスキング(黒塗り)が施されてはいるものの、買収をする側の伊藤忠と、買収される側のファミリーマートに代わって交渉に当たった特別委員会との攻防が克明に記されている。

決定文からは、一般株主を保護するために設置されたファミリーマートの特別委が、大株主の伊藤忠から受けてきたプレッシャーの実態も浮かび上がる。

決定文に記された交渉の一部始終

ファミリーマートが伊藤忠から完全子会社化の打診を受けたのは、新型コロナウイルス感染症が蔓延する直前の2020年2月のことだ。当時、伊藤忠は50.1%のファミリーマート株式を保有する親会社だった。伊藤忠は財務アドバイザーに野村証券を選任し、3月に1株2600円のTOB価格を提示した。

一方、ファミリーマートは財務アドバイザーにメリルリンチ日本証券を選任したほか、社外取締役3名で特別委員会を組成。TOBへの賛否、一般株主に応募を推奨するかどうかについては、特別委員会の判断を最大限尊重することとした。特別委はファミリーマートとは別に、財務アドバイザーとしてPwCを選任して企業価値の算出を行っている。

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