「安すぎた」ファミマTOB、伊藤忠との攻防の全内幕 地裁決定文が指摘「機能しなかった特別委員会」
だが、その後、伊藤忠側がMOM条件は満たさないものの、買い付け予定株数の下限(TOB終了後に伊藤忠の所有割合が60.0%になる株数)を設定することに応じると、ファミリーマートの会長・社長からも、結論を早く出したい意向が述べられた。
最終的に特別委は、「TOBには賛同するが、応募するか否かについては株主の皆様の判断に委ねる」とした。7月8日から1株当たり2300円でTOBを実施し、8月25日にTOB成立が発表された。
今回、東京地裁は、特別委がある時期を境に、伊藤忠との交渉方針を十分な検討なく転換してしまったと認定している。
特別委が伊藤忠およびファミリーマート経営陣の意向を受け入れ、「金額の引き上げに応じなければ協議を終了するとした方針」を転換する理由が示されていない、と指摘。「本件TOBにおいて特別委が機能しなかった、ゆえに手続きは公正ではなかったから価格を見直す」という結論に至った。
ファミマは東京高裁に抗告
この決定に対しファミリーマート側は、「原審が交渉方針の変更があったとするのは、当社が交渉戦略としてより高い価格を最後まで一貫して提示し続けていた点を曲解して、特別委として自らが主張していた価格以下でのTOB価格には納得していなかったはずと認定するもの。M&Aの交渉実務の理解不足に基づく」と猛反発。
「特別委としてはぎりぎりまで価格交渉を行った。伊藤忠から最大限の譲歩として提示された2300円というTOB価格については、メリルリンチおよびPwCの助言も踏まえて、PwCのDCF法以外は価格算定レンジ内でもあり賛同表明に至ったもの。交渉方針には何ら変更はなかった」と、東洋経済の取材に回答している。
地裁の決定は「事実誤認」であるとし、地裁の決定文をなぞった報道は「誤った報道」だと断言。4月5日に東京高裁に抗告した。
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