「そんなわたしも一時期、公務員を目指して勉強していたこともありました。ただ、公務員は安定しているとはいえ、民間企業のように自分ががんばって働いたぶんだけ、ボーナスもたくさん出るというわけではないですよね。もちろん、節約をして貯金をがんばればいいわけですが、わたしは奨学金の返済があったので、必死で働いて額面を増やしたかったんです。両親にも額面は伝えていません」
姉が道を切り開いてくれたおかげで、今の自分がある
ちなみに、奨学金を借りるときのお手本になった姉は、現在製造業の会社に勤めている。
「浪人したこと、東京の私立大学に進学したこと、それに奨学金を借りたことなど、結果的にわたしは姉と同じような道を歩んできたと思います。子どものときから、お金に困っていたのはお互いさまだったので、奨学金を借りるときも姉からはいろいろと勉強させてもらいました。
とにかく、わたしのロールモデルになったのは姉でした。彼女のような勉強ができる人が身近にいなければ、部活の引退後に勉強して大学に進もうとは思わなかったでしょう」
部活やその周辺で完結していた人間関係と情報を、姉が切り開いてくれたおかげで、今の小川さんはある。
しかし、その道の先で、ときに悔しい思いをすることもあったという。
「地元ではみんな同じような学力で、実家の経済状況も似たり寄ったりだったのですが、いざ東京の大学に進学すると、『みんなお金に困って生きてこなかったんだな』ということを痛感しました。それなりに裕福で教育を受けてきて、いい大学に入ったら当たり前のように大手に就職する……。
しかも、その人たちは奨学金を借りていないので、同じスタートラインに立っても、向こうはプラスになるのに、わたしはマイナスです(笑)。ようやく、貯金もできるようになりましたが、『奨学金を500万円返す必要がない人は、これまでに500万円貯めてこられたんだな』と、いまだに格差は感じて悔しい思いをすることはあります」
その一方で、奨学金という存在がなければ、ここまで這い上がることはできなかったとも、同時に考える。
「若いときは『貧乏が憎い!』とは思いましたが、やっぱり貧しいことはハングリー精神に直結してきます。これまでの仕事に対しての熱量も『奨学金という借金があるから、がんばらないといけない』というふうに、モチベーションの向上にも大きく関わってきました。幼少期に散々貧しい思いをしてきたので、今普通に生きていられることに対する幸せも大きいですよね。必ずしも貧乏がすべて悪かったかというと、そうではないかなと思います。それでも、奨学金はちゃんと就職して返せる額にとどめたほうがいいですよね」
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