「昔は本当にバカだったんです。マネーリテラシーがなくて……」
そう語るのは、神奈川県在住の鈴木美穂さん(仮名・32歳)。職業は保育士とのことで、Zoom越しに見える背景も、おそらく自宅ではなく保育園の一室。
20時を過ぎての取材だし、職場の人はもう帰っていないだろう。子どもたちがいたとしても、奨学金の話は聞いてもわからないか……などと筆者が若干気をもんだのはさておき、1時間の取材を通じて、美穂さんはずっと明るく、快活な口調だった。
美穂さんの話は、マネーリテラシーの高い人からすれば、批判されがちな内容かもしれない。しかし一方で、少なくない人にとって学びのある内容と感じられるだろう。キーとなるのは「3つの無知」だ。
遠距離通学が原因で奨学金
本連載では珍しく、美穂さんが奨学金を借りることを決めたのは、高校在学中ではなく、大学生になってからだったという。
「大学の学費は父が出してくれたのですが、家からとにかく遠くて、通学に片道2時間半かかりました。教職を取っていただけでなく、部活動をしていたのもあり、毎朝5時起き。それでも父は『通えない距離ではない』と言っていたんですが、話し合いの結果、『自分のお金でどうにかするんだったらいいよ』と言われたんです」
こうして毎月10万円を36カ月、合計360万円(すべて有利子の第2種)を借りることになった。しかし、念願の一人暮らしを前に浮かれてしまい、「借金だという感覚が持てなかった」美穂さんは、奨学金を借りる前に参加した説明会についてもこう振り返る。
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