「奨学金360万円」女性が"リボ地獄"に陥ったワケ 無知な若者がマネーリテラシー身につけるまで

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「計算したら休職手当だけではやっぱり、月々の返済ができないということがわかったんですね。それで、今までお金関係がぐちゃぐちゃだったので、手続きはしようと思って、学生支援機構に相談の電話をしたら『猶予申請ができますよ』と言われたので猶予を申請して、半年間、猶予してもらいました。

収入がないのに毎月引き落としがあるプレッシャーから開放されてホッとした一方、『待ってくれるなんて!』という気持ちでいっぱいでした。奨学金を借りたことに対しては、私は感謝の気持ちが大きいんですよ。奨学金を踏み倒すかもしれない、道を踏み外すことになるかもしれない……と思っていたので、救済制度があることを知ったときは本当にありがたいと思いましたね」

その後、美穂さんは今も勤務する保育園に転職。奨学金の返済を続けている。 

奨学金・リボ返済を通じて「共働き」志向に

奨学金×リボという、二重の返済で苦労したことで、結果的にマネーリテラシーを身につけることになった美穂さん。その後、結婚し、ふたりの子宝に恵まれるのだが、そこで金銭感覚だけでなく、人生観までも変化したことに気づいたようだ。

「第一子の出産は切迫早産になってしまって、妊娠中も仕事を休んでいたのですが、その時に、自分の収入がなくなる重大さに気づいたんですね。自分が大学時代に一人暮らしをするために借りた資金を、自分の稼ぎで返せないという事実を突きつけられ、それがもうショックでショックで。

同時に、私の奨学金の返済を旦那の給料から賄うのは申し訳ないなと思いました。だって、まだ出会っていない時に私が借りたお金ですからね。そこから、急速に『稼ぎたいな』と思うようになりました。自分のやったことの後始末は、自分でしたかったんです」

もともと子ども好きで、それが職業選択にも影響した美穂さん。最初に勤務した幼稚園が専業主婦が多いところだったこともあり、「自分もゆっくり子どもに関わりたいな」と、以前は専業主婦志望だったという。

「だから、共働きでいこうと思うようになったのは、ある意味、奨学金のおかげなんです。返済は42歳までですけど、共働きだとやれることが増えますし、その先も働くつもりです」

ただ、自分の子どもたちに同じような経験をさせたいかと言うと、そういう気持ちはないようだ。

「子どもたちには、奨学金は借りてほしくないな、とも思っちゃいますよね。する必要がある苦労だとは思わないですし、親がしてあげてもいいかなって。だから、今はコツコツと教育資金を貯めています」

奨学金やリボ返済を通じて美穂さんのマネーリテラシーが向上した結果、彼女の子どもたちは将来、奨学金を借りない側の人生を歩むことになるだろうか。

本連載「奨学金借りたら人生こうなった」では、奨学金を返済している/返済した方からの体験談をお待ちしております。お申し込みはこちらのフォームよりお願いします。
千駄木 雄大 編集者/ライター

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せんだぎ・ゆうだい / Yudai Sendagi

編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。奨学金、ジャズのほか、アルコール依存症に苦しんだ経験をもとにストロング系飲料についても執筆活動中。奨学金では識者として、「Abema Prime」に出演。編集者としては「驚異の陳列室『書肆ゲンシシャ』の奇妙なコレクション」(webムー)なども手掛ける。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)。原作に『奨学金借りたら人生こうなる!?~なぜか奨学生が集まるミナミ荘~』がある。毎月、南阿佐ヶ谷トーキングボックスにて「ライターとして食っていくための会議」を開催中。

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