筆者が取材する限り、C-2は16式などを搭載する場合、燃料や弾薬を降ろさなければならない。であればC-2のペイロードは26トンもないことになる。しかもその際に航続距離が極端に短くなるので空中給油を前提でないと運用できない。
だが、有事ともなれば数少ない空中給油機は南西方面で戦う戦闘機への給油を優先せざるをえず、C-2に給油できる余裕はないだろう。この点からも有事の16式の空輸はファンタジーにすぎない。
16式に関してはそもそも105ミリ戦車砲を搭載する必要があったのか、大変疑問である。防衛省の説明によれば、16式は対戦車の本格的な機甲戦闘は想定しておらず、せいぜい敵の軽戦車を排除でき、また普通科の火力支援に使うというコンセプトであった。また人口の7割が都市部に集中しているわが国で市街戦となれば105ミリ砲では副次被害も大きくなる。そうであれば105ミリ砲は過大である。
また105ミリ砲弾は大きく重い。これを補給が難しい島嶼防衛でつねに必要数を確保するのは難しい。そうであればより口径が小さい90ミリあるいは76ミリ砲を採用すればよかった。これらの弾種であれば重量も容積も105ミリ砲の半分以下だ。
より小口径の砲を採用していれば当然車体も小型化できて、戦闘重量も小さくできる。RWS(リモート・ウェポン・ステーション)などの装備も搭載でき、防御も強化できただろう。島嶼防衛とC-2での空輸を前提ならば105ミリ砲の採用はありえない選択だった。
大臣や幕僚長さえだます文化がある
今回の浜田大臣の発言は自衛隊の戦略運用構想の見直し、そしてC-2のペイロード偽装疑惑、陸自のCBRN対処能力の欠如の露呈など大きな問題をはらんでいるが、大臣はそのようなレクチャーを受けていないのだろう。防衛省や自衛隊には組織防衛のためならば大臣や幕僚長さえだます文化がある。控えめにいえば嘘ではないが事実でもない説明をする。だから疑ってかかる必要がある。
端的な例が南スーダン派遣時の陸自の日報隠蔽問題だ。2016年9月30日、ジャーナリストの布施祐仁氏が、自衛隊南スーダン派遣部隊が作成した日報について、防衛省に情報開示請求を行った。だが防衛省は布施氏に対し、「日報はすでに廃棄しており文書不存在につき不開示」と回答した。
後日、日報は破棄されていないことが判明し、稲田朋美防衛大臣、黒江哲郎防衛事務次官、岡部俊哉陸上幕僚長がいずれも引責辞任に追い込まれた。
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