沖縄以外で使用する装甲車輌にエアコンが要らないわけがない。夏場では東京ですら35度以上の猛暑日が続くことは珍しくない。装甲車輌は鉄の塊なので日光にさらされれば蓄熱して車内は50度以上になることもある。
さらに問題なのはエアコンがないと夏場の環境では戦えないということだ。CBRN(化学・生物・放射性物質・核)に対処するシステムを搭載した装甲車は車体を密閉して車内に加圧して気圧を高めることによって、外部からの有害物質の侵入を防ぐ。換気はフィルターを通して行う。夏場にエアコンなしではCBRNシステムがあっても使用できない。
大臣発言は多くの問題点をはらんでいる
今回の記事で注目する点があるとすれば、エアコンを搭載したことで16式がC-2での空輸ができなくなった、ということを大臣の口から聞けたことだろう。この発言は多くの問題点をはらんでいる。だが記者は気が付かなかったようだ。
大臣の発言だけでは空輸できる既存の16式とエアコン付きの2つのタイプが混在するようにも取れるが、3月に開催された防衛見本市、DSEI Japanにおいて、筆者は陸上自衛隊の展示ブースで担当者に確認したところ、既存の16式にも順次エアコンが搭載されるとのことだった。つまり、今後16式はC-2輸送機で空輸ができなくなるということだ。
これは16式の運用構想の抜本的な見直しである。換言すれば島嶼防衛の運用構想の瓦解である。
そもそもC-2による空輸がファンタジーでしかない。16式を空輸するのは単に16式本体だけを空輸するだけでなく、弾薬や弾薬運搬車や支援車両などのも必要であり、最低でも2機のC-2が必要だ。C-2は当初ですら調達予定機数は30機、これが現状22機まで削られている。
有事ともなれば人員や燃料弾薬、医薬品、水、トラックなど優先して運ばないといけないものがあり、空自が保有する他の輸送機、C-130Hなどをフルに使っても16式や19式を空輸している余裕はない。
また今回の大臣の発言でC-2の公称ペイロード(運搬能力)が相当怪しいこともはっきりした。C-2の公称ペイロードは30トンである。その一方で空自の公式サイトや防衛省のライフ・サイクル・コスト報告書などでは、C-2のペイロードはペイロード8トンのC-1輸送機の約3倍と記述している。そうであれば24トン程度ということになる。どちらが本当だろうか。
ペイロードが30トンであるならば戦闘重量26トンの16式にエアコンを搭載しても何ら問題なく空輸ができるはずである。それができないのはC-2のペイロードがもっと小さいということだ。
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