10月5~7日の3日間、東京・有明の東京ビッグサイトにおいて「危機管理産業展(RISCON TOKYO)」と「テロ対策特殊装備展(SEECAT)」が開かれた。
防衛省は危機管理産業展に毎年、自衛隊の装備などを出展している。本年は陸上自衛隊、中央即応連隊の輸送防護車と軽装甲機動車が展示された。輸送防護車は輸入品であり、タレスオーストラリア社の製品、ブッシュマスター耐地雷装甲車である。これは主として海外の邦人救出に使用されるものだ。
展示された輸送防護車はフロントガラスを含めすべて窓が塞がれていた。内部は機密で公開できないということだった。ところが、筆者はブッシュマスターが自衛隊に採用される以前から何度も記事を書いており、内部の写真も公開してきた。メーカーもそれを是としており、展示会などでも堂々と公開してきている。またネットでいくらでも内部の画像は手に入る。
このような公開情報を、あたかも防衛秘密であるかにように隠す。防衛省、自衛隊ではそれが恒常化しているが、これは諸外国に対して防衛省、自衛隊の情報管理能力、軍事の当局としての当事者能力の欠如を宣伝するに等しいと筆者は考えている。
情報がなければ合理的かどうか判断できない
民主国家においては、軍隊の情報は機密に属するもの以外原則公開するのが、文民統制の正しいあり方だろう。諸外国の軍隊が公開している情報を、政治家や納税者にひた隠しにする。これは民主国家の「軍隊」としては落第で、まるで戦前の帝国陸海軍と同じだ。
「民間人ごときは軍事に関して知る必要ない」と言っているのに等しい。先の戦争でその結果がどうなったか知らぬ人はおるまい。
情報がなければ政治家も納税者も防衛省や自衛隊の政策が合理的かどうかを判断できない。装備の調達にしても、その装備を調達することの是非や、コストが適正であるか、他国の装備と比較してどうかという比較ができなくなる。
他の例を挙げよう。筆者は防衛装備庁に対して、護衛艦で採用するRWS(リモート・ウェポン・ステーション)に関する取材を行った。RWSとは光学センサーと機銃などを組み合わせた遠隔操作の銃座だ。その仰角、俯角を尋ねたのだが「敵に手の内を晒せない」と断られた。
だが中国を含めて仰角俯角など基礎的なデータは公開している。筆者の知る限りこれを「機密事項」としている国もメーカーも存在しない。これを秘密だと隠すのは大概ナイーブだ。このことを記事で書いたのだが、その後、RWSを搭載した護衛艦の一般公開では仰角俯角の情報が公開されていた。秘密にしていたのは何だったのか。
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