昨年、陸自が新たに採用した19式155ミリ自走榴弾砲の携行弾数について岸信夫防衛大臣(当時)に大臣会見で質問したがこれまた「敵に手の内を明かせない」と断られた。だが155ミリ砲弾や装薬のサイズはNATO規格で、どこの国でも同じだ。19式は他国の同様のトラック搭載型自走砲と同じで、これを外部に弾薬のキャニスターを搭載しているので、搭載弾薬量は推定可能だ。だからどこの国でも明らかにしている。
岸大臣の前任者である河野太郎大臣(当時)にグローバルホークの運用に関して尋ねたが、同様に拒否された。だがグローバルホークの運用はメーカーも明らかにしているし、ネットでいくらでも検索が可能である。
防衛省は今になって装備品の整備費や、弾薬備蓄、抗堪性などが確保できずに、稼働率が下がっていると訴えているが、これは以前からわかっていたことだ。他国の何倍も高い装備を買うために、これらの必要な予算をケチってきたのはほかならぬ防衛省、自衛隊だ。
以前からこのような装備に関する情報公開が適正になされていて、国会やメディアなどで防衛省や自衛隊の金の使い方の議論が戦わされていれば、ここまでの状況にはなっていなかっただろう。
現状のまま予算を増やしても納税者の目の届かないところで無駄遣いされるのがオチである。防衛費を上げる前に、情報公開の徹底が必要だ。それによって無駄遣いに関する納税者の監視を通じて防衛費の使い方が適正であるかの監督が求められている。
このような体質のまま防衛予算を増やしても、国防力の増強は期待できない。
防衛産業にも似た空気
防衛産業にかかわる大手メーカーにも同じような体質が見受けられる。彼らはそもそも防衛事業を「ビジネス」と認識しておらず、納税者の払った税金で仕事をしているという意識も薄く、隠蔽体質なのか、株主や消費者に対する説明を責任も放棄しているように筆者には見える。
たとえば、今年のテロ対策特殊装備展では防衛大手の東芝が対ドローン用のレーダー、捕獲用のドローンなどのシステムを展示していた。これ自体は防衛省を想定したものではないが、防衛用にも使用できる。
見た目に大変立派なパンフレットを配布していたのだが、内容をみると各レーダーの使用周波数帯、探知距離など具体的、基礎的なスペックが記載されていなかった。これが秘密かというと、現場の展示員に聞けば教えてくれる。秘密でないならば、なぜ記載しないのか。このパンフレットを見て採用を検討するユーザーは、判断のしようがないだろう。この程度の基礎的な情報は他国のメーカーは公開するのが普通だ。ビジネスのやる気を疑ってしまう。
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