日本人は防衛の隠蔽体質の深刻さをわかってない 適正な情報公開がなければ無駄遣いされるだけ

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「テロ対策特殊装備展」に出展していた東芝のブース
「テロ対策特殊装備展」に出展していた東芝のブース(筆者撮影)

そして展示内容を撮影してもいいかと尋ねると、「今から本社の広報に確認します」という対応だった。諸外国の展示会で、この程度の展示を撮影禁止にしているメーカーは筆者の経験上ない。それに撮影がOKか否かは、展示の事前に決めておくものだろう。どうしてもセンシティブな判断がいるのならば、現場に広報担当者を在駐させて都度、対応・判断するのが筋だ。

実は昨年も同社は同じ展示を行っており、筆者は同じ体験をした。その際に苦言を呈したが、それがまったくフィードバックされていなかった。しかも、そのやり取りをしている目の前で、モニターで流しているビデオ画像をスマホの動画で撮影している人間がいた。だが、スタッフは誰も注意しなかった。

ざっと見ただけでも出展そのものの費用だけでなく、社員かどうかはわからないが現場には10人のスタッフがいて、立派なパンフレットをたくさん印刷している。これらには少なくないお金がかかっているだろうが、これでいいのかと疑問に思った。

防衛産業に携わっている大手メーカーはとかく防衛事業を隠したがる。株式を上場している会社であっても、自社のサイトには防衛装備の紹介がまったくなかったり、IR情報として開示していなかったりするケースが多い。例えばコマツが装甲車を、住友重機が機銃をかつて生産していたことを知らなかった投資家も少なくないだろう。そしてそれらの事業から撤退するという報道で初めて知ることになる。

これら企業の広報やIR部門に聞くと、証券会社などのIR関係者にはレクチャーしていると答えるところが多い。一方で一般投資家は蚊帳の外だが、それが上場企業の姿勢として適切だろうか。

消極的な情報公開が組織防衛に走らせる

対照的だったのが同じ展示会に出展していた売り上げ26億円、社員60名の防衛専門商社、日本エヤークラフトサプライだった。同社は外国製装備の国産化、整備を目指して栃木県に工場を構える。現在は組み立て生産が中心だが、国産比率を増やしていくという。防衛省は当事者能力の低い大手企業より、このような取り組みをしている中小企業こそ支援してほしい。

防衛省、自衛隊、防衛産業は全般的に情報公開に消極的だが、それは隠蔽体質につながり、国民や国家の利益よりも組織防衛に走らせる。結果として不合理、不効率な装備調達や運用が行われている実態がある。このような組織文化を是正して、金の使い方を含めて納税者が監視できるようにするほうが、防衛費の大幅増額よりも、はるかに優先順位が高く、また国防力の強化につながるだろう。

清谷 信一 軍事ジャーナリスト

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きよたに しんいち / Shinichi Kiyotani

1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003年から2008年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。東京防衛航空宇宙時評(Tokyo Defence & Aerospace Review)発行人。『防衛破綻ー「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『専守防衛-日本を支配する幻想』(以上、単著)、『軍事を知らずして平和を語るな』(石破茂氏との共著)など、著書多数。

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