「厳しいフィードバックが下手」上司の3大共通癖 なぜあなたの指導で部下は改善しないのか?

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2は、相手の話し方、すなわち行動にフォーカスした「行動ベース」の伝え方です。人と行動が区別された状態で、自分の「行動」に関する指摘なので、「自分自身が否定されている」という感覚は薄く、相手が受け取れる余地もあります。「山田さんの話し方がきつい」と本人にフォーカスされているので、自分へのフィードバックであることも伝わります。

3は、コミュニケーションスキルにフォーカスした「スキルベース」の伝え方です。スキルはその人の一部なので、この辺りになると、人格否定と受け取られやすくなります。

4は、相手の態度や価値観にフォーカスした「価値観ベース」の伝え方です。ここまでくると人格否定になるので、相手は「傷つけられた」と感じるか、ブチ切れするリスクがあります。他にも、「あなたは馬鹿だ」「あなたは人を見下している」「あなたは周りを大切にしない人だ」のように相手を直接否定するような言い方も、ブチ切れリスクは高まります。

ここまで見てきたように、ネガティブなフィードバックは、人格否定になるような伝え方は避け、「行動ベース」で伝えることを意識するとよいでしょう。フィードバックは相手が素直に受け取ってこそ、行動が改善されるなどの効果を発揮します。

悪癖3:厳しいフィードバックを躊躇する

管理職とは言え、部下に厳しい指摘をすることは、あまり気持ちがいいものではないでしょう。相手を「傷つけるかもしれない」「嫌われるかもしれない」と考え、フィードバックすることを躊躇したり、ちょっと様子見しようと後ろ倒しにする方もいると思います。

でも、メンバーのパフォーマンスが指標からズレていると思ったら、早めにフィードバックすることが重要です。メンバーはフィードバックをもらうことで、方向性のズレや間違いなどに気づくことができますし、早い段階で軌道修正すれば、よりよいパフォーマンスにつながっていきます。

相手に言いにくいことほど、前払いで伝えることが大切です。言いにくいからといって後回しにしていると、トラブルが起こったり、状況がさらに悪化して、その結果、マネジャーとメンバーの人間関係にもひびが入りかねません。

言いにくいことも前払いで伝えたほうが、早い段階で物事を建設的な方向へ変えていけるので、職場の心理的安全性も壊れずにすむのです。

ピョートル・フェリクス・グジバチ プロノイア・グループ株式会社代表取締役、株式会社TimeLeap取締役、連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者

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​Piotr Feliks Grzywacz

ポーランド出身。モルガン・スタンレーを経て、Google Japanでアジアパシフィックにおける人材育成と組織改革、リーダーシップ開発などの分野で活躍。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループを設立。2016年にHRテクノロジー企業モティファイを共同創立し、2020年にエグジット。2019年に起業家教育事業のTimeLeapを共同創立。ベストセラー『ニューエリート』(大和書房)、『パラダイムシフト 新しい世界をつくる本質的な問いを議論しよう』(かんき出版)など著書多数。

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