東京駅で爆売れ「お土産菓子」作る鳥取企業の正体 あの北海道「ルタオ」生み出したヒットメーカー

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再建と高成長のカギは独自のブランドプロデュース力だ。ブランド開発の核として寿スピリッツが掲げるのが「プレミアム・ギフトスイーツ」という概念。従来の旅行や帰省のお土産としてだけでなく、手土産や誕生日、バレンタインデーなどイベントでのギフト、さらには自分へのご褒美として買ってもらえる商品のことを指している。

同社グループ経営管理本部長の松本真司常務取締役は「多用途で買ってもらえるギフトの市場を作り、自分たちで拡大させてきた」と話す。

万人受けする安い商品ではなく、高価格帯で他にはない味や商品であることも重要だ。近年は菓子を受け取った人が商品についてインターネットで調べることも多く、人気やこだわりのある商品がギフトとして喜ばれる。「年々、ギフトに求められる価値は高まっている」(松本氏)。

リピーターを生み出す

「嗜好品」に特化していることは、高い収益力にもつながっている。菓子業界は、鶏卵などの原材料価格の急激な高騰に直面している。もともと価格競争の激しい「日常用の菓子」は、値上げによって客が離れ販売量を落とすリスクがあり、各社はどこまで値上げするかに頭を悩ませている。

祖業の寿製菓は鳥取地盤の菓子メーカー。お菓子のテーマパーク「お菓子の壽城」も展開する(提供:寿スピリッツ)

河越社長は5月16日の決算説明会で「プレミアム・ギフトスイーツに特化していることで、売価を適正に上げることができている。こういうこと(コスト上昇)がなくても商品の価値を上げて、売価を上げてきた。時代に適応したビジネスになっている」と語った。

ブランド開発ではファン作りも意識する。東京ではグレープストーンの「東京ばな奈」、北海道では石屋製菓の「白い恋人」がそれぞれの地域の定番土産で1強の状態だが、それらのバリエーション展開は味違いの商品が中心だ。

一方で「ザ・メープルマニア」は、クッキー、フィナンシェ、バームクーヘン、パイサンドなど複数種類を用意しており、期間限定商品もある。「例えば週1回の出張のたびに、1度買ってもまた別の商品を買ってもらえるのが我々の強み。ブランド自体の熱狂的なファンになってもらえる」(松本氏)。

ファンがリピーターとなり、ギフトを受け取った人も気に入って購入する。莫大な広告費をかけずとも裾野が広がっていくという好循環を狙っている。

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