「相手に共感」は実は専門家でもなかなかできない 大事なのは気持ちに寄り添うことではない?

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相手の気持ちに寄りそう。「共感」というのはなかなか難しいものです(写真:polkadot/PIXTA)
病気になる。しかも、それががんのような重い病気だったとしたら――。病気や治療に対する不安な気持ちや、うつうつとしたやりきれなさを抱える、そんながん患者に寄り添ってくれるのが、精神腫瘍医という存在です。
これまで4000人を超えるがん患者や家族と向き合ってきたがんと心の専門家が、“病気やがんと向き合う心の作り方”を教えます。今回のテーマは「気持ちの寄り添い方」です。

大切な人から告白されたら?

「実はわたし、進行したがんになったの……」

もしあなたが家族、友人、職場の同僚などから、このような話を突然打ち明けられたらどうしますか?

何と答えてよいかわからず、当惑してしまう人もいるでしょう。でも、それは相手と同じような経験が自分になければ、無理もないことです。

人によってはなんとか励まさなければと思って、「気を落とさないで。絶対大丈夫だから!」というような言葉をかけるかもしれません。しかし、この励ましを相手が望んでいないこともあります。相手は、本当はあなたに打ち明けたいことがあったのに、あるいは愚痴を言いたかったのに、「大丈夫」と言われてしまったら、それ以上は何も言えなくなってしまいます。

今回はがんを例にとっていますが、その人が大変な状況であることを打ち明けられたときに、私たちがどうしたらよいかについてお伝えできたらと思います。

大事な話を打ち明けられたときに、第一にしなければならないのは、「相手がどのような気持ちであるか」を理解しようとすることです。これをこれまでの人生経験のなかで自然と身に付けた人もいるでしょうが、そうでない人も多いです。

そしてもしあなたが、「自分はそんなことできない」と思ったとしても、あきらめないでほしいです。もちろん得手不得手はありますが、相手を理解するための聴き方は、スキルとして獲得できるからです。

何より、筆者自身がこのことがわからず戸惑っていた時期があります。

筆者はがんの専門病院で働き始めてから20年が経ちますが、振り返ってみると、経験が浅い時期は患者さんの話をどのように聴いたらよいか、わかっていたとは言い難い状況でした。当時の患者さんには申し訳ないのですが、次のような対話をしていました。

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