これまで4000人を超えるがん患者や家族と向き合ってきたがんと心の専門家が、“病気やがんと向き合う心の作り方”を教えます。今回のテーマは「がんにおける“病は気から”の真偽」です。
私の外来に、進行した胃がんの治療を受けている梶原由美子さん(仮名、 57歳)と、夫の昇さん(同、54歳)がいらっしゃいました。3カ月前に病気がわかり、深刻な病状であることを伝えられたそうです。そして、これから先のことを考えると、今はご夫妻ともに暗澹たる気持ちだと述べられました。
がんになると5人に1人ぐらいの方がうつ状態になるというデータもあるので、私は「病気がわかった後、気持ちが沈み込むことは無理もないこと」だとお伝えしました。
しかし、由美子さんの固い表情は変わらず、次のように言葉を続けました。
「でも先生、気持ちが沈んでいると免疫力が下がって、病気が進行しちゃうでしょ。夫も、『そんなに落ち込んでいたらだめだよ。由美子さんは病気が喜んじゃうことをしてしまっているよ」なんていつも言うんです。なので、前向きにならなきゃ、気持ちを切り替えなきゃって自分に言い聞かせるんですが、なかなかそうはならない。そして、ますます焦ってしまうんです」
昇さんも次のように言います。
「毎日、いっしょに頑張ろうって励ましているんですが、なかなか妻の気持ちは変わりません。それで、専門の先生に相談しようと妻に提案して、こちらに伺ったのです」
研究から導き出された結果は?
昔から「病は気から」という言葉があります。多くの方がこの言葉を信じ、病気に打ち勝つためには、気持ちを前向きに強く持っていなければならないと思われています。
しかし、この「病は気から」という考え方は、がんという病気にはあてはまるのでしょうか?
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