今度が最後の治療…進行がん患う女性が抱く葛藤 「背筋が凍るような恐怖」を乗り越えるには?

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進行胃がんが見つかった女性。「今度の治療が最後」と医師から告げられました(写真:mits/PIXTA)
病気になる。しかも、それががんのような重い病気だったとしたら――。病気や治療に対する不安な気持ちや、うつうつとしたやりきれなさを抱える、そんながん患者に寄り添ってくれるのが、精神腫瘍医という存在です。
これまで4000人を超えるがん患者や家族と向き合ってきたがんと心の専門家が、“病気やがんと向き合う心の作り方”を教えます。今回のテーマは「死の恐怖との向き合い方」です。

私の外来に、吉成智子さん(仮名、54歳女性)がいらっしゃいました。

吉成さんは1年前に進行した胃がんが見つかって以来、何種類かの化学療法を受けてきましたが、徐々に病状が進行しているそうです。主治医からは「今回の化学療法が積極的な治療の選択肢としては最後になる」と伝えられており、最近、不安感が強まってきてどうしようもなくなることがあるとのこと。腫瘍精神科を受診することを勧められたそうです。

吉成さんはショートカットですらっと背が高く、きれいな赤色のワンピースが似合っていました。そして、腫瘍精神科を受診された理由を尋ねると、明るい声で次のように話されました。その会話を再現してみます。

背筋が凍るような恐怖が襲ってきた

吉成さん:「今回が最後の治療」と言われてから、自分が死ぬということを強く意識するようになりました。それで、とくに1人でいるときなんかですかね、薄暗くなってくると恐怖が襲ってきて、背筋が凍るような感覚があるんです。「うわーっ!」って叫びたくなるぐらいなのですが、これ、なんとかならないですかね。

清水:なるほど、それはかなりつらそうですね。

吉成さん:実は私は昔から、自分が死ぬということや、自分がこの世からいなくなるんだということを考えると、恐怖を感じる傾向がありました。がんになる前は、死のことは考えないようにして対処できていました。しかし、今の状況だとそういうわけにはいかないんです。そして、どうしようもなくなるのです。

多くの人は自らが死ぬことを恐れます。そして、その理由は心理学の研究で詳しく調べられていて、大きく3つぐらいに分類されています(下表)。

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