今度が最後の治療…進行がん患う女性が抱く葛藤 「背筋が凍るような恐怖」を乗り越えるには?

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清水:「脳のクセで作り出すもの」と認識してしまえば、このことに振り回されないようにすればよいだけです。怖くなるたびに「あぁまた私の脳のクセが作り出しているな」というふうに、死に対する恐怖を客観視できれば、消えることはなくても、暴走することはありません。そして、だんだん慣れてきます。

私がお会いしてきた死に対する恐怖に悩んでいる人もそうなっていきましたから。そして、恐怖で何も手につかないほどであれば、一時的に抗不安効果がある薬を使う方法もあります。

吉成さん:なるほど。先生の話は一応わかりますが、でも、なんか屁理屈みたいな気もします。でもこうやって話に付き合ってもらえるのはうれしいです。

清水:そうですか。私も理屈っぽいということは自覚していますし、どういうかたちであれ、吉成さんのお役に少しでも立てたならばうれしいです。いつでも、何度でも吉成さんの悩みにはお付き合いしますし、質問にはできる限りお答えします。

死は意識しないほうがいいのか?

この解説をみなさんはどう感じたでしょうか。

完全に納得したり、安心できたりするものではないだろうと私自身も感じています。しかし、少なくとも死に対する恐怖についてあれこれ考えることは、患者さんにとって何らかの助けになってきた実感はあります。また、少なくとも私自身が死の恐怖と向き合うときに、この考え方は役に立っていたので、今回、紹介させていただきました。

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これを読んでくださっている方のなかには、死は意識しないほうがいいと思っている人もいると思います。

しかし、人生の有限性を意識して初めて、人生が輝きだすという側面もあります。日本人が古来もつ無常観はこのことに端を発していますし、古代ローマ人には「メメント・モリ(死を思え)」という教えがあります。いずれ死を意識することの効用についても、お伝えしたいと考えています。

※1  Death anxiety among advanced cancer patients: a cross‑sectional survey(Supportive Care in Cancer (2022) 30:3531–3539)
※2 『ケンブリッジ大学・人気哲学者の「不死」の講義』(スティーヴン・ケイヴ著、柴田裕之訳、日経BP)

清水 研 精神科医、医学博士

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しみず けん / Ken Shimizu

がん研有明病院腫瘍精神科部長、精神科医、医学博士

1971年生まれ。金沢大学卒業後、内科研修、一般精神科研修を経て、2003年より国立がんセンター東病院精神腫瘍科レジデント。以降一貫してがん医療に携わり、対話した患者・家族は4000人を超える。2020年より現職。日本総合病院精神医学会専門医・指導医。日本精神神経学会専門医・指導医。著書に「もしも一年後、この世にいないとしたら(文響社)」、「がんで不安なあなたに読んでほしい(ビジネス社)」など。

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