このため諸外国の3.5世代戦車は、第3世代の戦車に多くの増加装甲を付加している。
これらは側面や後部はもちろん、上部、車体下部まで文字どおり360度の防御力を強化している。戦車を「動くトーチカ」として使用するためだ。このため戦闘重量は60~70トンほどまでになっている。
10式は新規の設計で、その分、第3世代の戦車を近代化した3.5世代戦車に比べて重量軽減という点では多少有利だ。だが、だからといって70トンの戦車と同じ防御力を確保できるわけではない。それは物理的にも価格面からも不可能だ。セラミックやそのほかの複合装甲は、極めて高価であり、これらを多用すればコストがハネ上がる。そのため、そのような装甲を360度には使用していない。
一例を挙げるならばイスラエルの最新戦車であるメルカバIVのサイドスカート(車体側面につける一種の増加装甲)の厚さは、約10センチ。複合装甲と空間装甲を併用していると思われる。対して10式のサイドスカートは90式と同じで、わすか数ミリの鋼鉄製装甲板に過ぎず、単弾頭のRGPなどにしか有効でない。それではタンデム弾頭のRPGが防ぐことはできないだろう。
なぜ10式の価格は安価なのか
10式は軽量化と廉価を追求した戦車だ。90式ですら当初の調達コストは11億円もしたのに、10式は10億円にすぎない。にもかかわらず、C4IRシステム、補助動力装置、状況把握システムなど第3世代である90式にない装備と、これらを統合するためのソフトウエアが搭載されているのだ。ソフトウエアが戦車の価格に占める割合は少なくない。このため諸外国の3.5世代戦車は、おおむね第3世代の戦車の2倍程度の単価になっている。10式の価格は何らかの事情で安すぎる、と疑いたくなるのが普通だろう。
74式も90式も、諸外国の同世代の戦車に比べて3倍ぐらい高かった。海外の3.5世代の戦車は、おおむね15億円程度であるから、10式は 30億~45億円程度になっても不思議ではない。それがいきなり他国の3.5世代戦車の3分の2程度まで価格を激減させているのだ。価格が極端に安いのには何か訳があると考えるべきだ。
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