防衛省は本年度予算で10式戦車10両を102億円で要求した。陸上自衛隊は、平成23年(2011年)度末以降、この新しい戦車の配備を始めている。
結論から申し上げると、10式戦車の開発と調達はまったくのムダである。そもそも今日、陸上戦闘における戦車の優先順位はさほど高くない。多額の費用をかけて新しい戦車を導入するより、はるかに安価な既存の戦車の近代化で間に合う。防衛省は既存戦車と大同小異の新型戦車に大きな予算を使うことで陸自を弱体化させている。
10式戦車とはどのようなものか
10式戦車は90式戦車の後継として開発された。開発費は防衛省の平成25年度「ライフサイクルコスト報告書」によると、構想段階から開発費、試験費、生産のための初度費含めて871億円となっているが、主砲や懸架装置などのサブシステムの研究開発は別途であり、これらを加えるとざっと1000億円ほどになる。
調達単価は約10億円で、毎年約13両程度、合計で約130億円かけて調達されている。同報告書では300両を調達する前提と、ライフサイクルコストを約7500億円と算出している。
だが、現大綱の定数を満たすのであれば教育向けの車体も必要になる。このためさらに20両は必要だと考えると、合計はおよそ8000億円になる。後述するように、兵站(へいたん)の複雑化など間接的な経済的負担増などを含めれば、1兆円を超えるはずだ。
対して既存の戦車の近代化であれば、近代化の仕様にもよるが1000億円もあれば十分だ。
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