投資8000億円!新戦車は陸自弱体化への道 粛々と進む10式戦車調達の問題点<上>

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仮に、ある程度の揚陸能力を持っているにしても、周辺諸国に対して圧倒的な米軍と自衛隊の空海軍戦力によって、揚陸艦や輸送機はほとんどが沈められ、撃墜される。我が国に師団単位の敵が揚陸しているということは、すでに日米の空海がせん滅されている状態であり、制空権も制海権も敵の手にあるということだ。日米が制空権を取られれば、いくら優秀な戦車があっても航空攻撃で容易に撃破される。これがどれほど空想的なシナリオだということは、高度な軍事知識を持っていなくとも理解できるだろう。

90式は北海道限定だった?

そもそも50トンの90式は、諸外国の同世代の戦車よりも5~10トンも軽いのだ。90式が運用できない環境では、同クラスの敵戦車も運用できない道理となる。

90式は、富士学校を除けば北海道だけに集中配備されている。北海道限定の銘菓「白い恋人」のような存在だ。この90式のような「軽量な戦車」ですら、北海道限定で開発され内地で使用できないようであれば、それは大問題だろう。

KMW社のレオパルト2A7PSO(提供:KMW社)

元陸自の機甲科の幹部で著作の多い木元寛明氏は、90式を内地で使うことは問題ないと主張している。シンガポールのような都市国家ですら、90式よりもはるかに重たいレオパルト2A4を運用している。常識的に考えれば防衛省の主張はおかしな話であることがわかるはずだ。

しかも防衛省は90式導入時に、「内地で使えない戦車」という説明は行っていない。今回、内地で使えるように10式を導入するのであれば、かつて、納税者と国会をだまして「欠陥戦車」である90式を導入したことになる。

実際に、防衛大綱では短中期的に想定している脅威は島しょ防衛であり、またゲリラ・コマンドウ対処である。そうであれば、なにも最新式の戦車は必要ない。内地での90式の使い勝手が悪いのであれば、38トンの74式に、ネットワーク機能、増加装甲、センサー類の更新などを行えば済む話なのだ。別に対戦車戦闘を行うわけではないので、これで十分である。74式の主砲は105ミリ砲であり、10式の120ミリ砲よりも威力が低い。このため市街戦などでは、より副次被害を抑制できる。その面では、むしろ74式の近代化のほうがふさわしい。

確かに将来は確実ではなく、機甲部隊とその戦闘能力の維持は必要だ。だが、近代化した90式を北部方面隊隷下の陸自唯一の機甲師団である第7師団に集中配備し、そのほかの方面隊は近代化した74式で十分だ。ゲリラ・コマンドウ対処ならば、敵の最新式の戦車を戦うわけではない。余った90式は法律を改正してモスボール保存すればよい(現在の物品法では不可)。

10式はゲリラ・コマンドウ対処にも有用だと防衛省は説明しているが、それも10式導入のためのセールストークに過ぎない。実際のところ10式はゲリラ・コマンドウ対処を軽視している戦車だ。

10式戦車の問題点については、さらに後編でも詳述していきたい。

※後編は4月19日(日)に公開予定です。

清谷 信一 軍事ジャーナリスト

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きよたに しんいち / Shinichi Kiyotani

1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003年から2008年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。東京防衛航空宇宙時評(Tokyo Defence & Aerospace Review)発行人。『防衛破綻ー「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『専守防衛-日本を支配する幻想』(以上、単著)、『軍事を知らずして平和を語るな』(石破茂氏との共著)など、著書多数。

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