10式戦車は、欠点・弱点があまりにも多い 粛々と進む10式戦車調達の問題点<下>

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90式に随伴する89式戦闘装甲車(撮影:筆者)

当然ながら戦車は戦車だけで戦えるわけではない。戦車とペアを組む89式戦闘装甲車は、高額だったためにわずか68両しかなく、予算が足りず、第7師団すべての普通科連隊に配備されているわけではない。一部の普通中隊は、路上でしか使えない装輪式の96式装甲車などを使用している。当然、ほかの師団・旅団には配備されていない。

もちろん、野戦で戦車に随伴できない。第7師団以外の部隊では戦車に随伴するのは不整地走行ができない96式装甲車と同じく軽装甲機動車、あるいは非装甲の高機動車である。まるで第三世界の軍隊だ。同様に82式指揮通信車も、旧型のうえに近代化もオーバーホールも行なわれていない。これまた装輪式で不整地走行能力が低く、戦車に随伴できない。そもそも陸自では戦車に対して装甲車両の数が圧倒的に少ない。

しかも、80年代にその他多くの装甲車両、装備の調達が開始されているが、30年以上も放置されている。このため、旧式化が著しいうえに稼働率も落ちている。偵察用バイクに至っては、充足率は3割程度だ。戦車を長距離運搬する戦車トランスポーターは戦車1個連隊に数両しかない。これではいくら新型の10式戦車を導入しても戦略機動がほとんどできず、遊兵化するだけだ。

当然というべきか、これらの装甲車両は10式と同様のネットワーク機能を付加する計画もない。たとえるなら、会社の営業所のひとつだけがネットワーク化し、あとの営業所や工場などは音声電話しか持っていないようなものである。このためネットワーク化した10式を導入したメリットは生かされず、投資効率が極めて悪くなる。当然、現代的な戦闘を行う能力はない。ましてネットワーク化が進んでいる米軍との共同作戦は不可能だ。

先進国の機甲部隊としては落第点

兵站車両も同様であり、充足率、稼働率が低く中隊規模の演習を支えるのがせいぜいで、師団規模の戦闘は不可能だ。つまり、装備の面から言っても先進国の機甲部隊としては落第点で、博物館の様相を呈している。

先の東日本大震災で明らかになったように、無線機も定数を大幅に割り込み、しかも旧式が多いので、世代が違うと通信ができなかった。さらに言えば、陸自は偵察用UAVや精密誘導砲弾など、情報化、ネットワーク化の面では中国やパキスタンのような途上国にすら後れを取っている。陸自普通科の自動車化が 完了したのも21世紀に入ってからだ。陸自は戦車など一部の装備を除き、朝鮮戦争レベルで先進国の軍隊とは呼べないレベルにある。陸自が先進国の軍隊であると思っているのであれば、それは幻想に過ぎない。

繰り返すが10式を開発・調達せず、既存の戦車の近代化で済ませれば1ケタ少ない予算で済んだはずだ。そうであれば、その予算を情報化、ネットワーク化、諸装甲車やそのほかの装備の近代化、稼働率の向上、あるいは衛生、兵站の向上など、切実に必要な分野に投資することができたはずだ。

現状のような一部の「花形兵器」に資源を偏重していては、まともな戦力整備はおぼつかず、抑止力の整備という面でも落第といえる。税金の無駄使いを看過してはならない。

清谷 信一 軍事ジャーナリスト

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きよたに しんいち / Shinichi Kiyotani

1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003年から2008年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。東京防衛航空宇宙時評(Tokyo Defence & Aerospace Review)発行人。『防衛破綻ー「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『専守防衛-日本を支配する幻想』(以上、単著)、『軍事を知らずして平和を語るな』(石破茂氏との共著)など、著書多数。

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