糸井重里「僕が不登校について思っていること」 大事なのは「今をどうおもしろがれるか」

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あと、おもしろがるためには、結果を求めないほうがいいだろうとも思います。ゴールだけを考えると苦しくなっちゃいますね。ゴールではなく、今生きている過程をおもしろがることが大事だと思うんです。

たとえばサーカスの綱渡り。あれは、向こう側に着くことが目的ではありませんよね。観客は、「早く着かないかな」と思って見ているわけではありません。「うわ、すごい」とか「落ちそうだ」とか、ハラハラしながら過程を見守る、それがおもしろいわけでしょう。ゴールに着いたらおもしろい時間が終わってしまうんです。だから、目的やゴールにはあまり意味がなくて、今をどうおもしろがれるか、なのではないでしょうか。

糸井重里さん(撮影:矢部朱希子)

なんでもいいのだから、やればできる

――ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」で毎日記事を書いておられますが、何が原動力になっているのですか。続けるのがつらくなったらどうしていますか。

つらくなったらガマンしています(笑)。毎日やっていると、たまには休んでもいいか、とよく思います。でも、もったいなくなるんですね。「今日は休みたい」と書くだけでも1本できるのだから、それでごまかしてしまえ、と思うときもあります。けれども、もうすこし何か書くことがあるかなと考えると、何かしら思いつく。それで1日1本書けるんです。絶対にできないことじゃない、と知っているからできるんですね。

昔、ある人から聞いた話なのですが、親子で川遊びをしていたら子どもが川で流されてしまった。お父さんは助けに行きたいのに、流れが速くてタイミングをなかなかつかめない。そのときにお父さんが、「おまえは泳げるんだぞ」と。つまり、元々水泳教室に通っていた子だったらしいのです。その子は「そうだ、泳げるんだった」と気づいて泳いで川から上がったということです。

僕らが毎日やっていることは、この話とすごく似ていると思います。毎日1つ原稿を書くといっても、文字数が決まっているわけではないので「バーカ」と書いてもいいんです。なんとかなるんですね。なんとかなると知っていればできるんです。できないと思えばできない。だけど、本当はみんなできるんです。みなさんもよかったら、試しに1年間、毎日何かを書いてみてください。休みたくなったら「休みたくなった」と書けばいい。あるいは、兄弟や友だちに「今日は何かいいことあった?」と言って、その答えを書いてもいい。なんでもいいんです。

なんでもいいのだから、やればできる。それを知っておく。これが僕の生きるコツですね。ぜひやってみてください。絶対にできますから。(了)

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