しかし、目的地につくとその様相は大きく異なった。5日間の間に日田、天ヶ瀬、由布院、別府と回ったが、あまりの外国人観光客の数に圧倒された。特に韓国とタイからの集客は圧倒的で、由布院に至っては観光場所を訪れる半数以上が外国人観光客ではないかと感じさせられた。由布院では、宿泊者や街を歩く人々、そしてタクシー利用者についても同様に外国人観光客の多さが目についた。
由布院は観光という視点でみると非常にコンパクトな街でもある。駅を拠点にすれば、徒歩圏内でおよその見どころは回れる。立地的なアクセスのしやすさもあってか、街中のいたるところに韓国語の翻訳看板やメニューがあり、主要な地点には旅行会社の大型バスが数台駐車していた。それでも日が沈む頃には、昼間の喧騒が嘘のように人の波は消えていく。
タクシーに目を向けると、駅前の乗り場に着いてもすぐに利用者が現れ、ほとんど捕まらない状況だった。早朝の乗り場にいたドライバーの吉田さん(仮名・60代)はこう話す。
「今に始まったことじゃないけど、由布院のタクシー利用の3、4割は韓国の人じゃないかな。コロナ前は40万人超という、由布市の人口の13倍の人が来ていたくらいだから。特にここ最近は、中国人がまだ来ていないこともありその傾向が強くなっている。
でも、いいのは昼間だけだね。由布院は宿が食事付きだと最低でも3万円を超え、4、5万円はザラで最近ではさらに高くなっている。そのため日本人はあまり泊まらずに別府で宿泊する。この辺りは食事付きの宿が多くて夜に開いている飲食店も少ないから、夜は閑散とするわけ。運転手も夜は稼げないこともわかっているから、台数が極端に減る。実際に夜の由布院でタクシーを利用する人は、せいぜい別府への移動くらいでほとんどいないから……」
大挙して訪れる外国人観光客は市民の生活にも影響を与えている。市内の大衆浴場には「外国人観光客お断り」といった看板を出す施設もあった。この街では数少ない居酒屋に入ると、店主がその背景についてこんな説明をしてくれた。
「もともと韓国人の方は多かったんですが、最近ではそれに輪をかけて多い。どうやら韓国の有名アイドルグループが由布院に来たり、ドラマの撮影地になったりで一層人気に火が付いたみたいです。おのずと観光客向けの店と、そうでない店で分かれますが、今は価格帯も含めて“やりすぎ”な面もある。
大分の人は、すごくお風呂に入る時間を大切にします。外国人の方はタトゥーがある人も多いため、トラブルを避ける温泉でのルール設定が難しい。そこの線引きを曖昧にするのを避けるため、地元の人がいく場所と、そうでない場所は何となく分かれていて、それを守るためにも外国人お断り、という浴場もあるんです」
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