「やりがち?」リモート会議ですれ違う根本原因 「ビデオOFF」や「マイクミュート」は何が問題か

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もしも、社内で隣の席の同僚に話しかけた時に返事がなかったら「無視された」と思いますよね。同様に、チャット上でも長い時間、返信がないと相手は不安になってしまいます。特に、プライベートでもLINEなどのチャットツールを使いこなしている若い世代は、“即レス”(即時にレスポンスを返すこと)が基本になっているため、返信が遅いことに違和感を覚えがちです。

仕事上ではそこまで即レスにこだわらなくても良いですが、メールと違ってタイムリーなやり取りを前提としたツールなので、「返事を長く待たせすぎない」という意識は必要かと思います。

そして、チャットツールにおいて、ぜひ使いこなしてほしい機能が「ステータス表示」です。たとえばTeamsなら「連絡可能」「取り込み中」「一時退席中」など自分の現在の状態を示すことができます。なぜマイクロソフトが、このステータス表示をもっとも目立つ右上に設計しているのかというと、この機能をとても重要なものだと考えているからだと思います。

ステータスが「取り込み中」になっていれば、即レスが来なくても怒る人はいないでしょう。あなたが休みの日は「休日」のステータスを出しておけば、ムダなやり取りは発生せず、お互いのためになります。「ステータス表示をきちんと設定する」。これは、オンラインコミュニケーションの時代に新しく増えた作法の一つだと言えるでしょう。

それ、電話が必要な案件ですか?

2位の「チャットで済む内容なのに、すぐに電話をしてくる」という回答も、やはりチャットの位置づけの理解が曖昧なことに原因があるでしょう。世代によってかなり感覚が違うのですが、チャットやメールなどのツールを使いこなしてきた若い世代は、電話に苦手意識のある人が少なくありません。

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基本はチャットでやり取りし、電話は緊急の用件や込み入った話のみ最小限に済ませるというスタンスでいるため、どうでもいいことやチャットで済むような簡単な仕事の依頼などで電話がかかってくることを嫌います。

私が聞いた中では、「もっとも慌ただしい午前の時間に、『1カ月後の研修の件ですが、〇〇さんはお弁当を食べます?』というどうでもいい用件の電話がかかってきた」といった例や、「こちらがチャットを送ると必ず電話で折り返してくる人がいる。チャットのコメントがすべて一方通行」といった声も。

「チャット」と「電話」、そして「メール」など各ツールの特性をきちんと掴んで、時と場合によってうまく使い分けることが大切かと思います。

初谷 純 一般社団法人オンラインコミュニケーション協会代表理事

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はつがい じゅん / Hatugai Jun

ZoomやTeams等に代表されるオンライン会議ツールや、Slack等のチャットツールを活用した 画面越しのコミュニケーションに関する調査、研究を行う。また、働き方改革やリモートワーク推進を図る組織向けに、オンライン会議術やチャット コミュニケーション術等の研修やコンサルティングも行う。豊富な調査データに裏打ちされたメソッドは、生産性向上や、組織内外のコミュニケーション 活性化に有効であると評価されている。

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