英語でも、「How are you?」(最近、どうですか?)と聞かれたら「I'm great,thank you」と答えるなど、一部にお決まりのパターンがありますが、私の母国ポーランドのビジネスマンに、「How are you?」と聞けば、定形のパターンではなく、本質的な答えが返ってきます。
「最近はちょっと仕事が忙しすぎます」とか、「調子いいですよ。この間、出世しました」など、自己開示をしながら中身のある雑談を始めます。日本のような定形の雑談が交わされることは、めったにありません。
自己開示とは、プライベートな情報を含めて、自分の「思い」や「考え方」などを相手に素直に伝えることです。自己開示をすると、相手に「自分がどんな人物なのか?」を知ってもらえますから、警戒心を解きやすくなり、お互いの心理的な距離を縮めることができます。
自然と相手も自己開示しやすい雰囲気ができるため、一歩踏み込んだ関係性を生み出すことにつながります。コミュニケーションにおける自己開示は、信頼関係を築くために欠かせない大事なポイントと考える必要があります。
日本の雑談は定番のフレーズの後ろに隠れることで、自己開示をしない、あるいは自己開示をしなくて済む雑談が多いのですが、ヨーロッパの国々では、決まったフレーズはなく、「その人」に特化した雑談になることがほとんどです。
「今日は暑いですね」という会話が始まれば、「そうそう、今年の夏は暑いですね」となるのではなく、「これだけ暑いと、週末は何をしているんですか?」という話に発展します。
「週末はサーフィンをやっています」
「私は山が大好きで、休日は家族と山でキャンプを楽しんでいます」
すぐに自己開示をして自分のことを知ってもらおうとするだけでなく、自己開示できるような質問をするという特徴があります。自己開示には、自分のアイデンティティー(個性)を表現するだけでなく、自分がプライドを持てる話をするという意味があります。
日本人は雑談が苦手なのか?
日本のビジネスマンは、雑談を「本題に入る前のイントロダクション」と考えています。その日のメインテーマに入る前の軽いあいさつと解釈していますから、自分が選択できる「無難」な話題を選んで、相手に失礼にならないことだけを祈りながら、手探り状態で雑談をスタートさせます。
多くのビジネスマンが、雑談に対して苦手意識を持っている原因は、この考え方そのものにあると思います。
手探り状態で無難な話題を口にしていると、「相手は興味を持って聞いているのだろうか?」「話が途切れてしまうのではないか?」などたくさんの不安が芽生えてくるのです。
その場の空気が読める人ほど、雑談に対してナーバスになる傾向があり、「そもそも、何を話せばいいのかわからない」という人も少なくありません。
友人や知り合いとのプライベートな雑談であれば、無駄話や世間話でも十分に楽しい雰囲気になりますが、ビジネスの場では、それを期待することは難しいと思います。なぜならば、お互いに利害関係があり、双方が成果を求めて対面しているからです。
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