――つまり人々はメンタルが脆弱になったのではなく、自らのメンタルの問題を語りやすくなっただけなのですね。
体のケガについて語ると体が弱くなるわけではないし、ギプスをはめると骨折がひどくなるわけでもありません。どちらの場合も良い方向に向かっているのですが、いくらか反動はあるでしょう。変化はそのようにして起きるのです。
「メタ認知」で自分自身の思考を知る
――著書では「メタ認知」にスポットライトをあてていますね。なぜそれが重要なのですか?
メタ認知とは、言ってみれば「思考についての思考」です。セラピーで用いる主要なツールの1つで、自分の思考プロセスと距離をおいて、それを観察するのです。そうすれば、自分の思考がどのようなものであるかがはっきり見えてきます。
セラピーは思考を変えることだと考えられがちですが、実際には頭に浮かぶ考えを自分で選ぶことはできません。それはただ浮かんでくるのです。選べるのは、それぞれの思考について考える時間の長さだけです。
――あなたはポジティブシンキングを重視していないようですが、ポジティブシンキングは悪いことですか?
ポジティブシンキングは素晴らしいことであって、悪いことではありません。けれどもネットには、ポジティブシンキングだけを賞賛して、ネガティブな考えを排除しようとする傾向が見られます。そのようなルールで自分を縛ると、ネガティブな思考が現れて、それをコントロールできないときに、自分は失敗しているとか、自分はポジティブさが足りないと感じてしまいます。自分は総じて十分でないと感じて、気分が落ち込むのです。
セラピーでは、頭に浮かんだ思考を受け入れ、それからどう対処するかを選択するよう促します。「その思考を長く抱えていると、なりたい自分になれるのでしょうか? それとも、何か別の影響がありますか?」と問いかけます。つまり、あらゆる思考をいったん受け入れてから、それをどう扱うかを決めるのです。
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