「心の病気に免疫がない」からこそ知ってほしい事 コロナ、SNS…日常の不安から心の健康を守る

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ジュリー・スミスさん
ジュリー・スミスさん(写真:河出書房新社)

――セラピーのツールを与えるというのは、「認知行動療法」(認知に働きかけて気持ちを楽にする心理療法の一種)ではないですか?

その2つはよく混同されます。わたしは日常的なツールだけを紹介することにしました。その区別にはとても気を遣いました。この本に書いたことは、セラピーの教育的な要素であって、セラピーそのものではありません。つまり、今日、明日から自分で使えるツールであって、この本はセラピストではないのです。

ソーシャルメディアとのかかわり方は自分で決める

――ソーシャルメディアは若者のメンタルヘルスに有害だとよく言われます。特に、自尊心を損ない、不安を強めると言われますが、どうお考えですか?

わたしの動画のいくつかは、「ソーシャルメディアで見るものが現実とは限らないこと」を思い出させることを目的としています。特定のコンテンツを見るときに自分がどのように感じるかを意識し、自分の生活から乖離するためではなく、生活を充実させるために、ソーシャルメディアを利用すべきです。

――ゴースティング(一方的にコミュニケーションを断つこと)、トローリング(荒らし)、ブロッキング(ブロックすること)といったソーシャルメディア上の行動は人をひどく傷つけることがあります。そう感じている人々に、どのようなアドバイスをしますか?

自分に「選ぶ力」があることを理解しておくことが大切です。オンラインでどのくらいの時間を過ごすか、誰をフォローし誰をフォローしないか、どんなコンテンツに関わるかは、すべて自分で決めることができます。ただぼんやりとスクロールしていると、自分には選択権がないように思えてくるでしょう。

わたしの動画は、人々の注意を喚起し、そうした意識を高めることを意図しています。何らかのコンテンツが自分にマイナスの影響を及ぼすと思ったら、それを見ないという決断をしなければなりません。

――Z世代やミレニアル世代は精神的に脆弱で、メンタルヘルスの問題を抱えやすい、とよく言われますが、それについてどうお考えですか?

わたしはそうは思いません。わたしに言わせれば、メンタルヘルスは身体の健康と同じです。心の問題に対して免疫を持っている人はいないのです。誰でも、睡眠、規則正しい生活、社会とのつながり、栄養、運動といった生活の基盤を阻害されたら、身体とメンタルの両方が脆弱になるでしょう。

今ではより多くの人がそのことに気づき始めたので、メンタルヘルスの問題に取り組みやすくなりました。これは、はるかに健康的な考え方だと思います。

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