司法試験を目指すのであれば、王道を歩め キャリア構築は短期戦ではない

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また、一般的に日本を含む海外の学生が行くLLM(法学修士)プログラムの卒業資格だけを持って現地で就職するのは厳しく、むしろ不可能に近いでしょう。現地事務所は基本的にはJD(法務博士)のディグリーを持つ人が採用対象です。弁護士という職業においては、「日本の事務所には就職できないから海外で就職する」ということは、ほぼできません。

海外のロースクールを卒業すれば、日本の事務所に就職する際の差別化要素になるかといえば、実はあまり期待できない可能性が大です。繰り返しですが、どんな仕事も知識よりも実務が重要ですので、資格というペーパーをいくら集めたところで実務経験なしには本質的な差別化にはなりえません。

どんな資格もそうですが、やはり重要なのは試験に合格することではなく、それを生かしてどんな実務経験を積むかです。そして、その前提としてはいい経験を積める可能性がある事務所を目指し、司法試験での成績を上げる努力をすることに尽きる、ということです(繰り返しですが、資格試験を目指すということは一義的には成績で将来のポテンシャルが判断される、ということなのです)。

キャリアは短期戦ではなく長期戦

では、どのような差別化要素が考えられるか。一般的に国内の難関資格(司法試験や公認会計士)に学生のうちに合格する人は、そのための勉強に特化していることがほとんです。それだけ、難関資格というものは大変なものなのです。そのため、使えるレベルの語学力を学生のうちにマスターしているケースはまれです。それが両立できれば、一定度の差別化要素にはなるでしょう。

ひとつの知識だけで通用する世の中ではありませんので、複数の軸や視点を持つために、特定の分野を極めつつも、ほかの分野にも関心の幅を広げておく、というのが王道であり近道なのではないでしょうか。

キャリアとは長期戦です。自分の興味があり、どんな苦労も乗り越えられ、そして長期間やっていけるような分野を軸としつつ、なおかつ世の中の需要がありそうな(そして少なくともすぐには需要がなくならないような)分野にもうひとつの軸を見いだしてみる、ということが求められるのでしょう。

ちなみに一度、軸を絞ったとしても世の中の需要が変わるのに応じて、臨機応変に自分も変わっていくことが求められます。ぜひ世の中の流れを読む力を併せてつける努力をしてみてください。そして先ほど申し上げたような方法で差別化を図っても、その差別化の効力は永遠ではありません。語学の話が出ましたが、弁護士の人で就職時にできずとも、その後、頑張って語学を身に付ける人が多いのも事実です。

以上、いろいろと述べてきました。結論としては、資格を目的にするのではなく、自分がやりたい仕事が先にあり、その補完として資格を位置づける考え方が健全だと思います。必要であれば資格を取ろうか、という位のスタンスが望ましいのだと思います。りんごさんが、資格をご自身のやりたい目的を達成するための手段ととらえ、今後、活躍されることを祈念しております。
 

※安井さんへのキャリア相談は、こちらまでお送りください。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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