人間の記憶とは不思議なもので、目の前にいる人とインプットされた「自分に危害を加えた相手」「自分と仲が悪かった相手」が持っていた特徴と似たものが見つかった場合、明らかに別人であるのに拒否反応が起こってしまいます。
そして、困ったことにそれに気づかないまま、その人を昔、嫌だった相手と同じように思ってしまうのです。残念なことに、そのような嫌な気持ちは相手に伝わりやすく、そうすると、結局相手からも同じように「嫌だ」と思われ、お互いに嫌いな感情を持ち続けることになりかねません。
人を判断するときの3つの情報
もう少し、コミュニケーションの根本的な仕組みから考えてみましょう。私たちは人との情報のやり取りを、以下の3つの方法を通して行っています。
これらの情報を合わせて、私たちは相手の感情や状況を判断します。アメリカの心理学者メラビアン博士は、これらの割合を視覚情報55%、聴覚情報38%、言語情報7%と定義しています。
これを見てどう思われるでしょう? 意外に言葉の情報が少ないと感じませんか? 人は圧倒的に、相手の表情やしぐさ、声のトーンや抑揚などで相手の状態を判断しているのですね。
相手のことを「嫌だな」と思えば表情はこわばり、声のトーンは単調化します。そして、それを感じとった相手は同じように「嫌だな」と感じ、あなたと同じような表情や声で返してきます。それを繰り返すたびに2人の関係は悪化していき、最後には「本当にあの人は感じの悪い人だ」と印象を固めてしまいます。これがあなたの嫌いな人にあなたが嫌われる理由です。
たとえば、みなさんが友だちと喧嘩をしたとしましょう。しばらくして、その友だちと会ったときに、「この前は本当に悪かった」と謝罪をしたとします。そして、その言葉を聞いた友だちがニッコリ笑って、「いいよ。もう気にしていないから」と言ってくれたとしたら、とても安心するでしょう。
逆に、表情もなく、声のトーンも抑揚がない状態で同じ「いいよ。もう気にしていないから」という言葉を言われたら、どう思うでしょうか。おそらく、「おや、まだ怒っているな」と思うはずです。
これでお分かりいただけたでしょうか。私たちは日常では言葉を介して意思の疎通を図っていると思っていますが、実際には非言語である表情や音の調子のほうにウエイトをおいて相手を判断しているのです。
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