スタンフォード大学ビジネススクールでは、とくにリーダーを目指す人間においては、ミスを素直に認め、自分の失敗を明らかにするだけでなく、それをちゃかしてみせることこそが効果的だと指南されている。
弱みを見せるなんて、笑いものにされるだけではないかと不安に駆られるかもしれないが、リーダーシップ専門家のダナ・ビルキー・アシェルによれば、そこで起きる笑いこそが、チームに信頼感を生みだすものになるという。
この効果を狙って、あえてミスの公表を実践している経営者がいる。
下着メーカー・スパンクスのCEOサラ・ブレイクリーは、定例の全社会議の席で、小さなミスから戦略上の大きな失敗まで、どんな内容であっても、そこにユーモアを見いだし、面白おかしく話して聞かせる時間をとっている。
さらに、そのミスの内容に似つかわしい曲を選び、従業員たちに声をかけて、歌って踊ることまでするという。テレビ番組『しくじり先生』を彷彿とさせるエンタメ精神に驚くばかりだ。
かつては、リーダーたるもの、抜け目なく立派で崇拝されるべき対象とされていた。だが、いまは、ありのままの姿を見せる、共感性の高い人物こそが求められる時代である。
実際、スパンクスの従業員たちは、経営者のユーモアあふれる失敗談に対して、声援を送るそうだ。
失敗を恐れないための心理的安全性
ここに生まれているのは、「ユーモアは楽しい」という単純な心理だけではない。自分の失敗を笑い話にすることは、みずからの心理状態をコントロールして、事実を受け入れやすくし、気持ちを切り替えやすくするための手段になる。
さらに、それを見ているまわりの人たちにとっても、安心して失敗を認めやすくなる効果をもたらしている。
弱みを隠さない経営者の姿を見て、従業員たちは、失敗を恐れる気持ちから解放され、「自分も大きなリスクをとってみよう」と考えられるようになる。組織の中に心理的安全性が育まれるのだ。
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