楽天、3700億赤字でも「状況は意外に悪くない」訳 決算の「5つの数字」で読み解く今後の行方
さて楽天モバイルの赤字の多くが設備投資に起因するわけですから、今後の投資規模がどう変わるかで、楽天グループの赤字のピークもある程度予測できます。
2022年の設備投資額が2960億円、2023年も同規模の3000億円を見込んでいますが、ここがピークで、2024年以降は必要となる設備投資額は大幅に減っていくことになるわけです。
実はあまり知られていませんが、楽天モバイルのネットワークはライバルの携帯3社と違い仮想化、自動化、オープンアーキテクチャーなど最新のデジタル技術を活用しているところに特徴があります。ざっくりいうと他の携帯電話会社よりも設備投資額で40%、運営費用では30%もコストが低くなります。
つまり後発の携帯電話会社であるがゆえに、最新技術でネットワークを構築することができ、結果として減価償却が進んだ段階ではコスト優位なポジションを確保できているわけです。ちなみに楽天は楽天シンフォニーという新会社を作って、この技術をドイツやイギリスなど海外の携帯電話会社に提供するビジネスでも成長しようとしています。
今回の記事の最大の関心事は、過去最大の巨額な赤字を計上した楽天がはたしてここから復活できるかどうかです。そのカギを握る概念が楽天経済圏、楽天グループの言葉ではこれを「楽天エコシステム」と呼びます。
楽天グループの月間アクティブユーザー数は直近で3900万人、この1年間で11.2%増加しています。楽天経済圏と呼ばれるその特徴は、ユーザーがグループ内の他のサービスを併用する比率が大きいことです。
例えば楽天カードの利用者は約2810万人で、その約半分の1340万人が楽天銀行に口座を開き、約3割の860万人が楽天証券口座を開設しています。これらのユーザーをつなぎとめているツールが、ユーザー満足度業界首位に位置する楽天ポイントです。楽天経済圏のサービスを使えば使うほどポイントが加算される方式になっていることで、ヘビーユーザーであればあるほど楽天経済圏に取り込まれてしまう仕組みです。
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