ショパンコンクールの優勝者が語るライブの魅力 ブルース・リウ氏「レコーディングは化学実験」

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 ショパンコンクールでは、ゾーンに入ると緊張を忘れて楽しむことができたという(撮影:梅谷秀司)
世界3大音楽コンクールの1つで、5年に1度開催される「ショパン国際ピアノコンクール」。その第18回(2021年開催)で優勝したのがカナダ人ピアニスト、ブルース・リウだ。予選3ラウンドではすべての審査員から「イエス(=次のラウンドに進ませたい)」を獲得し、本選で演奏したピアノ協奏曲第1番も聴衆を魅了した。演奏技術の高さ、明るく新鮮なショパンは大いに注目を集めた。
カナダのモントリオール大学では、アジア人として初めてショパンコンクールで優勝したダン・タイ・ソンに師事し、個性を伸ばしながらショパンを学んだという。「ピアノはたくさんある選択肢の1つ」と語る25歳のピアニストは、今何を考えているのか。(インタビューの前編はこちら

ゾーンに入り、緊張を忘れて演奏を楽しんだ

——私はショパンコンクールをYouTubeで視聴しましたが、ブルースさんの演奏にはショーのような感じがあり、コンクールを受けているという以上に、聴衆を楽しませようとしている印象を持ちました。

実はかなり緊張してたんです。そう見えなかったかもしれませんが。
楽しませようとしているように見える演奏をしていたとしたら、それは意識的なものではなくて、僕の自然体の演奏がそういうものだということ。すごく緊張した一方で、ゾーンに入ると、緊張を忘れて楽しむことができました。

僕は趣味がいろいろとあってスポーツも好きなんですが、その中で培われた体の動きが演奏に表れていたというのはあるかもしれません。

例えば、ピアノは1つの音を弾いている間にその音に(音をだんだん強める)クレッシェンドをかけることはできない。だから、それは体で表現する。体の動きや振動から、聴衆に多くのものを感じとってもらうことができるはずだと思っています。

ショパンに取り組む前は、僕はどちらかというと考え方の固い人間でした。けれど、ショパンを弾くことで柔軟性が出てきた。動き方も太極拳と同じような感じで、柔らかな演奏ができるようになりました。

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